腹三分目:夕焼けに影二つ-1 ページ8
「おーい、早く帰ろー」
いつも通り、彼女は校門の脇で僕を待っていた。
――隣の、赤い髪の男子生徒を除いては。
「何でソイツが居るんだ……?」
「やほー、浅野クン」
瞳に剣呑な光を宿らせた男子生徒――赤羽業が彼女の隣に立っていたのだ。
「え、もしかして待ってたの浅野クンだったの?」
「ん、うん。そうだよ。家が同じ方向なんだよね」
「へぇ〜」
赤羽は目を細めると、悪魔的な笑みを浮かべて僕のほうを見た。
「……もしかしてコレ?」
「は?」
小指を立ててみせた赤羽に、僕は思わず顔を顰めた。
その代わりに、何故か彼女が赤面してスクールバッグを赤羽に投げつける。
「あは、[彼女]ちゃん照れてる〜?」
「黙れや赤羽!」
赤羽は彼女の鞄をキャッチして、からからと笑った。
ますます眉を吊り上げる彼女を見かねて、僕は声を掛ける。
「……相手にしない方が良いぞ」
「ありがと……君はもうA組に置いとくには勿体無い位だよ。E組に来ない? 歓迎するよ」
「冗談でも止めてくれ……」
どういう思考回路を持っていればその話題に行きつくのだろうか。
一応、彼女は褒めているつもりらしいが全く嬉しさを感じない。
「それに比べて赤羽は……天才だし喧嘩強いし嫌味だし近づき難い感じ」
腕を組んで溜め息を吐いた彼女に、赤羽は苦笑する。
「心外だなぁ……浅野クンも似たようなもんじゃん」
「ん? ……あぁ、確かに言われてみればそうかも」
「……おい」
殴ってやろうか、と一瞬思ったものの止めた。
……『喧嘩強い』の項目に花丸が付くのは避けたい。
「あ、怒った? ごめんごめん。ところで君、赤羽も一緒に連れて帰ったら嫌?」
「は?」
「一緒に帰りたいんだってさ」
「ね」、と彼女は赤羽を振り返ったが、当の本人は不服そうだ。
「えー、浅野クンも一緒に帰るの?」
「何か文句あるわけ? 何するにも人数多い方が楽しいじゃん」
「……ま、[彼女]ちゃんがそう言うならいいよ。浅野クンも良いよね?」
……僕の意見は決定事項なのだろうか。
彼女と赤羽は、さっさと門を出ていってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「暗殺教室」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑茶 - 他の方も言ってらっしゃいますが、数の少ない浅野くんメインの小説は、すごく私得でした！個人的には全然暗殺教室の小説は需要あると思います！これからも無理はなさらず頑張って下さい (2019年8月14日 20時) (
レス) id: 1907b7e26f (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ライラさん» コメントありがとうございます。ほのぼのを目指して書いていたので、そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2019年7月31日 16時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ライラ - 浅野くんの小説が少ないなかでこんなに素晴らしい作品に出会えるとは思ってませんでした…ほのぼのしつつなんだかんだ主大好きな浅野くんが好きです笑 (2019年7月31日 1時) (レス) id: 3c124a00ab (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ひかりさん» 返信が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、本当に嬉しいです！ (2019年6月19日 13時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はじめまして！浅野君がかっこよかったし、ストーリーもとても面白かったです！ (2019年4月4日 20時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桃野忍@もものしのぶ | 作成日時：2017年1月21日 12時
