腹二分目:灰色の夕立-2 ページ6
「……随分E組に優しい生徒会長サマが居たもんだね」
「素直に礼も言えないのか君は……」
彼女は何故か不機嫌そうに目を逸らした。
どうせ同じ方向に家があるのだから一緒に傘に入って帰ればいい、という僕の提案をようやく呑んだ彼女は、何がそんなに不満なのか先程からずっとこんな調子である。
「……こうしてると君、ちっさいな」
同じ傘に入っていると身長の差がよく分かる気がする。
彼女は更に不機嫌そうな声で呟く。
「高校から伸びるタイプなんだよ。……きっと」
小さく付け足された「きっと」に、少しだけ同情してしまう。
「……望みは薄そうだな」
「…………放っとけ」
意外にも身長の低さは気にしているようだ。
……身長が気にしているのなら、身だしなみにも気を付ければいいのに。
そんなことを思いながら彼女の乱れた髪を見ていると、その毛先から雫が滴っているのに気付く。
「……君、濡れてないか?」
「傘が君の器くらい小さいから。仕方ないよ」
……E組の立場で僕に対して好き勝手言うその度胸は大したものだと思う。
「僕の器はともかくとして、君の場合もう少し寄れば濡れないだろ」
「きっ……?!」
僕が僅かに空いていた距離を詰めると、彼女は奇妙な声を上げた。
「君はイタチか何かか。急にどうした?」
「……じゃあ言うけど。君はこの状況をどうとも思わないの……?」
「……は?」
いつになく、歯切れの悪い話し方。
一瞬、彼女が何を考えているか分からなかったが、
少し考えて出た結論を彼女に確かめる。
「まさか君……照れてたのか?」
「ば……っ、」
頬を赤くして口ごもる彼女を見て、僕は思わず吹き出した。
「傑作だ! 半分男みたいな君に限ってそんなことは無いと思っていたが……」
「いわゆる相合傘だからな?! 他の女子も誘ってみろ、皆同じ反応をする!」
目を合わせようとしなかったのも機嫌の悪さも、その所為だと考えると滑稽でたまらない。
「明日も雨なら僕の傘に入れてやっても構わないぞ」
「そのうち寝首を掻きに行ってやるから待ってろ! ……そしてもう笑うなっ」
君と居ると楽しい。
……E組の彼女に対して、僕はそんなことを思っていた。
+
歩兵と支配者が対等な立場に成れないこと、
自覚しつつも心地よい関係に甘えていた。
+
+
作者より
もしかしたら予告なく修正するかもしれません。
何せ気に入らんのですよ。
あと、評価/お気に入り/コメントなど有難うございます!
めちゃめちゃ嬉しいです。
桃野忍
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緑茶 - 他の方も言ってらっしゃいますが、数の少ない浅野くんメインの小説は、すごく私得でした！個人的には全然暗殺教室の小説は需要あると思います！これからも無理はなさらず頑張って下さい (2019年8月14日 20時) (
レス) id: 1907b7e26f (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ライラさん» コメントありがとうございます。ほのぼのを目指して書いていたので、そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2019年7月31日 16時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ライラ - 浅野くんの小説が少ないなかでこんなに素晴らしい作品に出会えるとは思ってませんでした…ほのぼのしつつなんだかんだ主大好きな浅野くんが好きです笑 (2019年7月31日 1時) (レス) id: 3c124a00ab (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ひかりさん» 返信が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、本当に嬉しいです！ (2019年6月19日 13時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はじめまして！浅野君がかっこよかったし、ストーリーもとても面白かったです！ (2019年4月4日 20時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃野忍@もものしのぶ | 作成日時：2017年1月21日 12時
