腹二分目:灰色の夕立-1 ページ5
生徒会の仕事を片付けて外に出ると、雨が降っていた。
折り畳み傘を差して帰宅しようとすると、渡り廊下の屋根の下で空を見上げている彼女が目に入る。
「E組が本校舎で何やってる」
「げ……」
「君は都合の悪いことがある度に『げ』と言う癖を止めた方が良さそうだな」
「幻想的な雨だね、と言おうとしたんだけど?」
即答で屁理屈を返す彼女に、僕は溜め息をつく。
確かあの夜も「げ」などと言われた気がする。
……一度、彼女にはE組の立場を思い知らせておいた方が良さそうだ。
「……傘忘れたのか?」
「もし忘れたとして、君は傘をくれるのか?」
「嫌に決まってるだろ」
「つまりそういうことだよ」
どういうことだ。
「……要するに傘を忘れたんじゃないのか?」
「違うよ。傘忘れた本校舎生徒に“貸してあげた”だけ」
“貸してあげた”を強調して言った彼女は、腕を組んで、ふいと明後日を向いてしまった。
要するに無理矢理とられたということなのだろう。
「……E組に落ちた君の自業自得じゃないか。逆恨みは止めろ」
「別に恨んでないし、寧ろ恨んでるのは自分の正しく回らん頭だよ」
「その辺りを理解しているだけ君は救いようがある。電話でタクシーでも呼んで帰れ」
「携帯も財布も持ってないよ」
……は?
「君、クラスの緊急連絡網どうしてるんだ?」
「家の電話。もしくは担任の口頭」
緊急だと言っているのに口頭で伝えられるなど、E組の担任は何処の超生物なのだろうか。
「君には分からないだろうな。クラスでグループ作ってるのにLINEすらやっていない人の気持ち」
「君がどれだけやるせない思いをしてきたかはよく分かった。それよりどうやって帰るつもりだ」
「仕方ないし……走って帰るよ」
「は? 風邪引くぞ」
「馬鹿は風邪引かないから大丈夫。それじゃ」
「あ……おい待て!」
頭の上に鞄を乗せて屋根の下から出ようとした彼女の腕を思わず掴む。
「……何?」
「…………君、本当に馬鹿じゃないのか?」
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緑茶 - 他の方も言ってらっしゃいますが、数の少ない浅野くんメインの小説は、すごく私得でした！個人的には全然暗殺教室の小説は需要あると思います！これからも無理はなさらず頑張って下さい (2019年8月14日 20時) (
レス) id: 1907b7e26f (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ライラさん» コメントありがとうございます。ほのぼのを目指して書いていたので、そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2019年7月31日 16時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ライラ - 浅野くんの小説が少ないなかでこんなに素晴らしい作品に出会えるとは思ってませんでした…ほのぼのしつつなんだかんだ主大好きな浅野くんが好きです笑 (2019年7月31日 1時) (レス) id: 3c124a00ab (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ひかりさん» 返信が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、本当に嬉しいです！ (2019年6月19日 13時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はじめまして！浅野君がかっこよかったし、ストーリーもとても面白かったです！ (2019年4月4日 20時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃野忍@もものしのぶ | 作成日時：2017年1月21日 12時
