お代わり:腹八分目に君が好き。-2 ページ27
「…………」
彼女は引き攣った表情で、ただただ僕を見つめている。
「……悪い。忘れてくれ」
その表情に僕は思わず目を逸らす。
――今まで見てきた中で一番真っ赤な顔。
赤羽も同じ顔を見たのかと思うと、少し残念な気がする。
自分だけの小さな秘密が、誰かに露見してしまったようで。
「忘れて、は無いでしょ君……ちょっと」
「あー、君の性質を忘れていた僕が悪かった。無かったことにしてくれ。僕らの仲の為にも」
彼女と気まずくなるのは極力避けたい。
何故って、……彼女が好きだから?
一度言ってしまうと、もうそれしか理由が思い浮かばない。
「言っておいて何だが本当に君が好きなのかは分からない。ただ、僕の語彙で表せる中でいちばん近いのが『好き』だっただけだ」
「えー……ごめん、まったく意味が分からない」
彼女は落とした携帯を拾い上げて、眉を顰めた。
「どうだろう。もしかしたら、私も君のことが『好き』なのかも知れない」
彼女の頬は、まだ熱を帯びている。
「傘貸してもらった時とか、本当にドキドキしてたし。でもただ単に、君が異性だからなのかも。それに私は君と付き合いたいとか、そこまで思ったことない」
……もしかしたら、僕もそうなのかもしれない。
彼女のことを可愛いと思ったのは、異性だから?
赤羽が彼女に告白した時、僕が寂しくなると思ったのは、単に『仲良し』として?
僕だって、……彼女と交際したい程に、彼女を想っていない……?
…………考察は纏まらない。
「……僕は結局、君とどうなりたいんだろうな?」
「さぁ。私だって、別にそこまで願望とか無いし。ただ、これからも一緒に居られたらな、とは思うけど」
「さて」、と彼女は両手を打ち合わせた。話題を締めるみたいに。
「私達、名前を呼び合ったことすら無いんだよ? ……出来れば、友達から始めたいな。感情に確信が持てたら、付き合うなり何なりすればいいんじゃない?」
「……!」
立場の違い。特進クラス3-Aと、エンドの3-E。
それが、僕らが対等な友人としての『確信』を持つことを邪魔していた。
でも、卒業した僕らなら……きっと、それも可能だ。
そんな風に、僕の彼女に対する好意に『確信』を持てる日が、来るのかもしれない。
「……[彼女]さん」
「…………何ですか? 浅野君」
彼女は微笑んで答えた。あの日みたいに、敬語で。
「僕と、友達から始めませんか?」
+腹八分目に君が好き。
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緑茶 - 他の方も言ってらっしゃいますが、数の少ない浅野くんメインの小説は、すごく私得でした！個人的には全然暗殺教室の小説は需要あると思います！これからも無理はなさらず頑張って下さい (2019年8月14日 20時) (
レス) id: 1907b7e26f (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ライラさん» コメントありがとうございます。ほのぼのを目指して書いていたので、そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2019年7月31日 16時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ライラ - 浅野くんの小説が少ないなかでこんなに素晴らしい作品に出会えるとは思ってませんでした…ほのぼのしつつなんだかんだ主大好きな浅野くんが好きです笑 (2019年7月31日 1時) (レス) id: 3c124a00ab (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ひかりさん» 返信が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、本当に嬉しいです！ (2019年6月19日 13時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はじめまして！浅野君がかっこよかったし、ストーリーもとても面白かったです！ (2019年4月4日 20時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃野忍@もものしのぶ | 作成日時：2017年1月21日 12時
