腹五分目:君に似合うのは-2 ページ15
「あの子とは仲良くしてくれているの? 学校ではどんな感じなのかしら」
玄関に靴を揃えて置いた僕に、彼女の母親は尋ねてきた。
脇に置かれた靴箱の上には、小学生くらいの女の子と若い男女が写った写真が飾られている。
僕は少し考えてから答えた。
「毎日楽しそうですよ。かくいう僕も、彼女と居て面白いですから」
「そう、よかった。これからも仲良くしてあげてね」
ほっとした表情の女性に、僕は「勿論です」と答えた。
どうやら、僕のことはE組の人間だと思っているようだった。
理事長の息子であることに気付いていない辺り、特進クラスに興味は無さそうだと見られる。
彼女が言っていた通り、彼女の母親は心の傷を誤魔化すために教育に力を注いでいるということは、初対面の僕でも何となくイメージ出来た。
理由も無く、この女性が暴力を振るうなんてことを僕には想像できなかったから。
彼女の母親に続いて階段を上ると、木製のプレートが掛かった部屋が目に入った。
プレートには彼女の名前が彫られている。
「[彼女]? お友達が来てるけど、会えそう?」
「……ん。誰……?」
扉の向こうから弱い声。溌剌とした彼女らしくない、なんて思う。
「えっと……浅野君、だったわよね?」
「ぎっ……?!」
簡単には表現しがたい声の後、すぐに部屋の戸が開く。
その向こうには気だるそうな表情の彼女が立っていた。
「えー、君、何で来ちゃった……?」
「不満か?」
「まぁね。風邪移されたくなかったら帰った方が良いよ」
「まさか。君に移されるなら本望だ」
「な……っ」
軽い冗談に彼女は言葉を詰まらせた。
少し赤みを帯びていた頬をますます赤くする。
僕らのやり取りを聞いていた彼女の母親は、クスッと笑った。
「浅野君、珈琲でも飲んでいく?」
「はい。頂きます」
階段を下りていく自分の母親を横目に、彼女は不機嫌そうだ。
「……本当に天然タラシだよね、君」
「どうだか。計算ずくかも知れないぞ」
「確かに」
そう言って彼女は小さく笑った。
普段なら大声を上げて笑っているかもしれない。
「それはそうと、風邪大丈夫なのか? E組の学級委員二人が心配してたぞ」
「片岡ちゃんと磯貝が? 心配かけちゃったなぁ。でも、明日には学校行けそうだよ」
「そうか。……よかった」
「なに、心配してくれてたの? 嬉しいなぁ」
また彼女は笑って見せた。
……やっぱり、君には笑顔が良く似合う。
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緑茶 - 他の方も言ってらっしゃいますが、数の少ない浅野くんメインの小説は、すごく私得でした！個人的には全然暗殺教室の小説は需要あると思います！これからも無理はなさらず頑張って下さい (2019年8月14日 20時) (
レス) id: 1907b7e26f (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ライラさん» コメントありがとうございます。ほのぼのを目指して書いていたので、そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2019年7月31日 16時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ライラ - 浅野くんの小説が少ないなかでこんなに素晴らしい作品に出会えるとは思ってませんでした…ほのぼのしつつなんだかんだ主大好きな浅野くんが好きです笑 (2019年7月31日 1時) (レス) id: 3c124a00ab (このIDを非表示/違反報告)
桃野忍(プロフ) - ひかりさん» 返信が遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、本当に嬉しいです！ (2019年6月19日 13時) (レス) id: ab6d1b44ca (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はじめまして！浅野君がかっこよかったし、ストーリーもとても面白かったです！ (2019年4月4日 20時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃野忍@もものしのぶ | 作成日時：2017年1月21日 12時
