☆ ページ49
ym side
「もう!何やってんの!」
俺がイライラして、ちょっと大きな声を出してしまって、しまったと思ったのに、慧はへらへら笑って、ソファーに寝転がるとスマホを触りだした。
慧が持ってたスーパーのビニール袋。中身を見れば、卵にベーコンにトマトに牛乳にイチゴに。それを冷蔵庫に入れる。
はぁ
まじで、焦ったんだから。
家に帰ったら慧が来てるのが分かったから嬉しくて、なのにリビングに行ってもいなくて、部屋のどこを探してもいなくて、なんだか嫌な予感がして。
電話して焦りまくってたから、なんでそんな事したのか聞けなかったし、迎えに行ってうちの近くのスーパーのビニール袋を持った時にその重さと触ったらぬるくなった牛乳のパックと、慧の苦笑いの表情が、なんだか理由を聞いちゃいけない気にさせた。
だけど、口に出さずにはいられなかった。
山「慧!なんで、帰ったのよ」
伊「ん〜」
山「お腹すいたの?」
伊「まぁ」
山「何か作る?」
伊「食べた」
やっぱり、何かがあってうちから出たのか。
思い当たる事がなくて、どうしたら言いのか分からないけど、その“なにか”は、自分からは言わないというか言えないのが慧。
山「夕飯、食べるでしょ」
伊「ん〜」
山「何、食べたいの?」
慧が買って来た食材から作る料理・・・
和食が好きな慧だけど、和食ではなさそう。
伊「なんで分かったの?」
山「はあっ?」
伊「俺が来たって」
山「あぁ、なんでかって・・・」
なんでか。
言葉にするのは難しい。
家に帰ってなんとなくそんな気がして。“あれ?”って思った。なんとなく、いる気配がして
洗面所に行ったら、水滴がついてて、リビングに行こうとしたら、ちょっとドアが開いてて。
ちょっとが重なって慧の存在があちこちに残ってた。
山「うちの鍵を持ってるのは慧だけだし、なんていうか慧の気配がいっぱいあったから。なんとなく、そう思ったとしか言い表せないんだけど」
そう言えば、慧が笑いながら両手を広げた。
リクエスト通りに抱き締めれば、自分の腕の中に慧がいて。
やっと捕まえられた事にほっとする。
伊「煮魚。山ちゃんとっておきの煮魚と白米がいい」
山「りょーかい。料理代は高いからかね」
伊「カラダで事前清算、願います」
山「ぶっ、事前清算、賜りました」
結局、俺の疑問に答えをくれなかったけど、嬉しそうに笑うから、俺はめいっぱいの愛をあげる事にした。
262人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:昨日 | 作成日時:2023年2月21日 11時