初心を思い出して ページ8
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祐希と付き合い始めてから1年少し経ち、
すっかり横顔にも見慣れた頃だった。
祐希の顔を横から見た時に
くるんって上を向いてるまつ毛とか
可愛いなって。
それは今でも思うけど
慣れてしまえば当たり前のことになっていた。
「1年も経つと変わっちゃうもんだね」
付き合いたて当時は
お互い大好きでもう好きすぎて
毎日でも会いたいくらいデレデレだったのに。
「なにが?」
「いや、時の流れは恐ろしいなって」
おばさんみたいなこと言うじゃん、
って笑いながら反応してくれるけど
目はずっとスマホに向けられたまま。
これがいわゆるマンネリ化
というものなのだろうか。
「ねえ祐希。」
んー?
とかまたどうでも良さそうな返事。
「ちょっとさ、初心を思い出してみようよ」
「は、何言ってんの」
若干呆れ声で笑われたけど。
これでいいのか、石川祐希は。
「こうさ、付き合いたてみたいにイチャイチャしたりさ」
2人の間に少しの沈黙が流れた後、
は?という祐希の声に我に返った。
今のじゃまるで
私がイチャイチャしたい、みたいな。
自分でもこんなこと言うつもりはなかったのに
でももう言ってしまったことは
どうしようもなくて。
「ごごごめん今の忘れて!」
「Aはイチャイチャしたいの?」
...終わった。
ほら、もう祐希からの熱い視線が痛い。
「したくない…って言うのも何か違うけど、」
そういう意味じゃない、
って言おうとした時にはもう
私の世界は反転していた。
目の前には祐希の顔、
その後ろには天井。
「...これはどういう?」
「これからイチャイチャするんでしょ、」
もうこうなってしまったら
誰も彼を止めることはできない。
「何からする?ちゅー?」
スイッチの入ってしまった彼となったら、
それは、もう。
.
(何か思ってたのと違った)
(Aはイチャイチャしたくないの?)
(だから、そうじゃなくてさ)
(俺はずっとしたいと思ってるんだけど、)
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作者名:まる | 作成日時:2016年9月25日 10時