参拾参【観戦はお静かに】 ページ36
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紅葉はわくわくした様子そのままに言った。
「ウチを呼んだってことは、そうでしょ？」
「勿論。チェンジフォーム！」
変身したツボミ改め、桜花は刺々しい怨霊に向かって飛んだ。
「雫と共に消えよ！」
禍々しいオーラを纏い、針金が露出した凶暴な姿に変化した怨霊は、水滴の弾丸を無数に繰り出した。桜花はそれをひらりひらりと避けながら怨霊との距離を詰めていく。
避けられた弾丸の一部は後方で観戦中のレイヤと笠木を襲った。
「嫌だ！ まだ死にたくない！」
レイヤの腰にしがみつく笠木。こうずっと叫び続けられると、流石のレイヤも耐えられない。
「死にはしませんよ。安心して黙って見てろ」
とうとう口調が荒っぽくなる。レイヤは慣れた手つきで流れるように学ランの下のチョッキから銃を取り出し、水の弾丸と相殺した。
「さて、これで安全だって分かっただろ？ 観戦は静かにしましょうね」
「は、はい……」
半分脅すように言い聞かせたレイヤ。笠木に許された返事は肯定のみであった。
観客席が無事静かになったところで、レイヤの視点は自然と桜花と怨霊に向く。
＊・＊・＊
「今度はこちらから参ります」
桜花はそう言うと一瞬にして怨霊の視界から消えた。
「何っ」
怨霊が驚いていられたのも束の間。やっと焦点が桜花に合ったが、時既に遅し。
「秘技、桜花舞碧空」
扇から暴風が吹き荒れ、どこからか現れた桜の花びらと共に天高く飛ばされた怨霊。しばらくして落ちてきたときには、元のビニール傘の怨霊に戻っていた。余程怖かったのだろう、意識を失っている。
「ふぅ。レイヤ、終わったよ」
変身を解除し、観戦していた2人の元へ歩み寄ったツボミ。レイヤは親指を立てて迎えたが、笠木はこの上なく混乱している様子だ。
「えっ、あっと、えっ？」
言葉にならない声を発しながら、笠木はツボミとレイヤを交互に見ていた。
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