参拾壱【男に二言はねぇ】 ページ34
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とりあえずおとり、という唐突な発言によって、ある作戦が決行された。
「レイヤ、本当にやるの？」
「男に二言はねぇ」
レイヤ、ツボミそして笠木の3人は現在Y学園駅にいる。
これからレイヤが傘を持って電車に乗り、途中で寝ることで、笠木の傘が無くなったときの状況を再現しよう。そしてあわよくば原因を突き止めよう。という算段である。
「本当に大丈夫ですか？ もし店長さんの傘まで消えちゃったら……」
「安心してください。コイツにはちゃんとGPSが入っていますから」
笠木との会話では敬語を崩さないレイヤ。その答えを聞いたものの、笠木の表情から不安は完全には消えなかった。
「そんなことより、ほら。電車が来ましたよ」
レイヤはホームに入ってきた電車を指差した。ここから電車で3駅先の妖々駅まで乗る。その間に傘が無くなれば捜索フェイズに移行し、何も起きなければそれまで、笠木には帰宅してもらい、あやしや2人は別の方法を試すことになる。
今回乗るのは、なぜか人がほとんど乗らない時間のこれまた人がほとんど乗らない車両。
「さて、作戦のこともあるし、おやすみなさい」
レイヤは空席に座るのが早いか、そう言って目を閉じた。あまりの変わり身の早さに、ツボミと笠木は目を合わせたのだった。
＊・＊・＊
『次は妖々駅、妖々駅』
目的地が近いことを示す車内アナウンスで、レイヤは目を覚ました。大きなあくびを1つしてから持っていた傘を探すが、予想通り消えている。
「2人とも、降りるよ」
ツボミに促され、レイヤと笠木は電車を降りた。
＊・＊・＊
「さて、無事消えたな」
レイヤは呑気にそう言ったが、見ていた笠木は気が気でない。
「本当に大丈夫ですか？」
「勿論。これを見てください」
レイヤはスマホを取り出して見せた。画面には地図と赤い点が表示されている。
「店長さん、これは？」
「傘の位置情報を地図に表示しているだけですよ」
笠木が不思議そうにスマホを覗き込む。ツボミもそれを覗いて訊いた。
「それで、今の傘の位置って？」
「距離はここから歩いて10分ぐらいだ」
「そうと分かれば、早く行きましょう！」
そう言うが早いか、ツボミは駅から飛び出した。レイヤと笠木はそれを追いかけるしかなかった。
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