【妖怪学園Y】持つ者、持たざる者・序 (ページ26)

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弐拾参【あれは去年の秋だった】ページ26

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　レイヤはフブキに箱を手渡した。それこそ、中身を労るように、優しく。

　箱を受け取ったフブキは、財布からお金を取り出しながら、ふとこんなことを訊いた。

「昼間にさ、メドゥーサのこと知ってたけど踏み切れなかったって言ってたじゃない？あれって何があったの？」

　この発言にはツボミも驚いた。これまで、レイヤからメドゥーサの話は全くされていなかった。

「レイヤ、知ってたの？どうして何も教えてくれなかったの？」

　ツボミに凄い気迫で問い詰められ、レイヤは渋々と話し出した。

「あれは去年の秋、あやしやを始めてちょっと経ったぐらいだった」

＊・＊・＊

　昼休み、教室にて。レイヤは友人のショウに眼鏡について色々と訊かれていた。ショウは一般に非科学的と呼ばれる存在や現象にとても強い関心を持っていたが、生憎そういったものを見る力が無かった。

　ショウはレイヤの眼鏡が特殊なもので、『非科学的』存在を見ることができると知ると、それを貸してくれるよう頼んだ。あまりにもしつこかったので、レイヤも根負けし、少しだけだと言って手渡した。

　ショウが眼鏡を掛けた時、ちょうど教室の外を園等先生が通り過ぎた。そこでショウは、園等先生の背中から『何か』が生えているのを見てしまった。

　すぐに目を逸らせたショウは、しばらく魚のように口をパクパクさせていたが、やがて声を出せるようになると、レイヤの肩を掴んで叫んだ。

「何だよ、アレ！お前、あんな物を好き好んで見てんのかよ！」

　ショウの言う『アレ』が何を指すのか聞く前に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「ショウ、後で店に来てくれ。そこで話そう」

　レイヤは一方的にそう言って、渡した眼鏡はそのままで授業を受けた。