拾参【ノーベル賞は俺が取る】 ページ16
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塔内部では、紅丸が1人でメドゥーサと戦っていた。塔に入るときに共にいた仲間は戦闘能力の無いマタロウを除き全滅。自身も、長時間の変身のせいで疲弊していた。
「くそっ……」
「ごめん……、オデ……限界……」
変身の限界。紅丸はジンペイとバケーラに分離した。
「あらあら、おしまい？」
対するメドゥーサは余裕そうに笑みを浮かべ、ゆっくりとジンペイに近づいてくる。
万事休すか――
ジンペイは動けず、マタロウは友の危機をただ見ることしかできなかったが。
突然、轟音と共に、塔に暴風が吹き荒れた。爆風だと気付くには少々時間が掛かった。
爆発による粉塵が収まったとき、マタロウの目の前には2人の影が。
「発明好きの新入生と、……貴方、怨霊には手出ししないでって言ったでしょう？」
メドゥーサが呆れたという声を出した。レイヤは皮肉っぽくドヤ顔で返す。
「『今日入学してくる子たちに取り憑いた怨霊』には手を出してねぇよ。それに、YSPが4人中3人終わってる。ってことは、万が一に該当するだろ」
「ちょっと、私まだ自己紹介してない！
将来ノーベル賞の化学賞と平和賞の同時受賞予定の、姫川 フブキちゃんです」
ウインクしてそう言ったフブキ。レイヤは少々肩をすくめた。
「悪いが、それは無理だな。化学賞は俺が取る」
「へぇ、言ってくれるじゃない。平和賞はいらないの？」
「俺は平和とは無縁なんでね。ソイツはくれてやるさ」
まるでノーベル賞を舐めているような発言が飛び交う中、全く相手にされていないメドゥーサが痺れを切らした。
「貴方たち、邪魔よ。消えてちょうだい」
メドゥーサが両手の蛇を2人にけしかけたが。
「よっ」
フブキが例のスプレーを蛇に吹きかけた。蛇たちは悶絶する。流石のメドゥーサも黙ってしまった。
その間に、フブキとレイヤは、一応無事なマタロウとジンペイに歩み寄った。
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