拾壱【至急応答せよ！】 ページ14
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フブキを追って北の塔手前の森まで来たレイヤは、ツボミから通信を受けた。眼鏡の左側にあるボタンを押し、応答した。
「どうした？ もしかして、もう終わっちまったか？」
『ま、そんなところ。後片付けを……』
ツボミの声は、そこで不意に途切れた。通信は繋がったままだ。中から僅かに声が聞こえる。
『……一掃する……私……とる……のに』
園等先生の声だが、トーンがいつもより低い。
「ついに本性を現したってわけか」
「何かあったの？」
先行していたはずのフブキが、いつの間にかレイヤの真横にいた。
「塔の中がちょっと面倒なことになったらしい。戻るなら今だぜ？」
レイヤはフブキに向かってそう言った。経験上、素人を連れて行けば事態が悪化しかねないと思ったからだ。
しかし、フブキは笑って言った。
「戻るわけないでしょ。ここまで来ちゃったんだし。それに、自分の身は自分で守るから、安心して」
フブキの笑顔が自信から来るのか、怨霊を舐めているのか、レイヤには見分けが付かなかった。
その時、通信にツボミの声が入ってきた。よほど慌てているのだろう、時々音割れを起こしている。
『レイヤ、緊急事態発生！ 園等先生が怨霊に！』
「五月蝿い！ マイクに向かって叫ぶな！ んなこたとっくに知ってらぁ！
怨霊メドゥーサ、奴の蛇の――」
レイヤがそこまで言ったとき、バキッという音と共に通信が途絶えた。
「ツボミ!? 何があった？ 応答しろ！」
今度はレイヤが通信機に向かって叫ぶ番だった。しかし、いくら叫んでも返事はない。
「今度は何？」
「塔内の状況が悪化したとみえる。姫川、本当に行くんだな？」
「行くに決まってるでしょ」
何があってもフブキは引かないつもりらしい。レイヤは諦めて、話を進めた。
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