陸拾捌【一歩先に】 ページ22
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しかし、怨霊軍の攻撃は終わらない。ちょうど煙幕が晴れ、後衛の怨霊たちが姿を現した。
眠ったままの男子3人、まだ戦闘できるほどまでは回復していないツボミ、先の戦いで武器を出し切ったと思われるフブキ、付いて来ていながらも戦闘能力があるとは思えない園等先生。この組み合わせでは、とても勝ち目は無いように思われた。
「嘘、まだ来るの!?」
ツボミが諦めに近い声を出した時、その後ろから2人分の足音が通り過ぎた。
その片方はすぐに分かった。炎の渦を繰り出す赤い後ろ姿。
「俺様がいねぇとこのザマか」
「メラ!」
ツボミは安堵の声を漏らした。
ドヤ顔でメラが言う前では、あれほど大量にいた怨霊が灰と化している。前に彼に会ったのは入学式の事件以来だが、この短期間でYSPが急に強くなったらしい。何かあったのだろうか。
ツボミがそんなことを考えていると、サン太夫が口を開いた。
「今まで何してたんですか?」
もっともな疑問。メラは高らかに笑いながら答えた。
「ウチは貧乏でな。俺がバイトしまくらないと生活していけねぇのさ! 俺は怨霊退治ばッかりやってられねぇんだよ。貧乏暇無しとは良く言ったもんだぜ!」
「家族のために……、えらいですね」
サン太夫が称賛する中、ジンペイはなかなかに辛辣な言いようである。
「そこまで堂々と金無いことを宣言されると気持ち良いな」
「そうだろ! 金は無いが、やる気があれば何でもできる!!」
威勢の良いメラに、ジンペイはさらに追い討ちをかける。
「金無いなら、その髪を染める金を節約しろよ」
「確かに」
フブキも珍しくジンペイに賛同する。死んだ魚のような目の1年生と、話を聞き流すだけだったツボミに向かって、メラは意味ありげに言った。
「そうか、お前らはまだ思い出してねぇのか。悪いが俺はお前らより一歩先に行ってる」
メラの言葉の意味は、この時のツボミたちにはまだ分からない。
そしてメラが言い終えたとき、その肩から黒い塊が転がり落ち、ツボミにしがみついた。
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そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» ではこちらから向かわせていただきます! (2020年6月7日 13時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤモンド(プロフ) - そら*フィアさん» 面白かったですか!!良かったです!ボードでお話全然大丈夫ですよ!どっちのボードでしますか? (2020年6月7日 13時) (レス) id: 5f9687d2d6 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» とんでもない!面白かったですよ! お友達大歓迎です!ぜひよろしくお願いします。(あまり浮上できないかもしれませんが、)ボードでお話しませんか? (2020年6月7日 12時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤモンド(プロフ) - そら*フィアさん» 私の作品も見に行ってくれるんですか!?(あんまり面白くないかもです…)ありがとうございます!!あの…良ければお友達ってなれますかね…? (2020年6月7日 11時) (レス) id: 5f9687d2d6 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» ありがとうございます!とても励みになります。今度ダイヤモンドさんの作品も見に行きますね! (2020年6月7日 11時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
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