伍拾玖【それこそが】 ページ13
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保健室。いつにもなく緊迫したような表情で、知ってる、と繰り返すバケーラに、ジンペイらは息を呑んだ。
バケーラは1つ息を吸うと、落ち着いた様子で言った。
「オデの知ってること喋る前に、妖怪と怨霊の違いを説明するど」
そういえば、YSPのYは妖怪の頭文字だった。レイヤはどこまで知っているのだろう、とツボミがぼんやりと考えていると、バケーラが説明を始めた。
「怨霊とは人間や物の想いから生まれた存在。想いが晴れると成仏し消える者たち。
妖怪とは怨霊の想いが固定し、存在し続ける者たちだど」
ツボミはそれを聞き、今この場にはいない紅葉のことを想った。紅葉も怨霊である以上、いつかは消えてしまう。これまで見てきた怨霊たちもそうであったから、薄々気付いてはいたが、それでも友が消えてしまうかもしれないと考えるのは恐ろしい。
ツボミの心情には目もくれず、バケーラは続ける。
「怨霊は不安定な存在のため、妖怪から"下"に見られてて、それが怨霊たちの我慢の限界を越えて、争いが始まった……」
「そりゃ妖怪が悪いわ」
バケーラが言い終える前にジンペイが相槌を打つ。他の生徒も賛同するが。
「でも、真実は、怨霊界も妖魔界も1人の妖怪によって罠に嵌められたんだ。
怨霊界は利用され、妖魔界と大戦争を引き起こしてしまった」
予想を遥かに上回る事実に、その話を聞いていた全員が驚愕した。
「その妖怪の名は、輪廻」
鬼気迫る表情でバケーラはそう言い切った。
何が起きているのか分からない学園長が、痺れを切らした。
「おい、みんな、何を話しておる?」
この騒動ですっかり忘れていたが、学園長には怨霊が見えていないのだった。
さてこの状況をどう説明すべきかとツボミが頭を悩ませていると、ベッドで寝ていたエマがゆっくりと起き上がった。
「エマ!!」
「エマさん!!」
その瞬間、先の緊迫した雰囲気はどこへやら。学園長は娘に飛びつくや否やエマを気遣う発言をしつつ抱きかかえた。
「な、何?」
感動の涙を流す学園長と、父の態度に混乱するエマ。彼女もまた何が起きているのか理解できていないらしい。
「さっきのは一体何だったんだ……」
「何かに取り憑かれているみたいだったけど、怨霊の気配はしなかったし……」
エマの様子に、一同は首を傾げる。マタロウとツボミがそれぞれの気になったことを口に出すが、その答えには辿り着けないように思えたが。
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そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» ではこちらから向かわせていただきます! (2020年6月7日 13時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤモンド(プロフ) - そら*フィアさん» 面白かったですか!!良かったです!ボードでお話全然大丈夫ですよ!どっちのボードでしますか? (2020年6月7日 13時) (レス) id: 5f9687d2d6 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» とんでもない!面白かったですよ! お友達大歓迎です!ぜひよろしくお願いします。(あまり浮上できないかもしれませんが、)ボードでお話しませんか? (2020年6月7日 12時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
ダイヤモンド(プロフ) - そら*フィアさん» 私の作品も見に行ってくれるんですか!?(あんまり面白くないかもです…)ありがとうございます!!あの…良ければお友達ってなれますかね…? (2020年6月7日 11時) (レス) id: 5f9687d2d6 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - ダイヤモンドさん» ありがとうございます!とても励みになります。今度ダイヤモンドさんの作品も見に行きますね! (2020年6月7日 11時) (レス) id: 8aa2e0c93a (このIDを非表示/違反報告)
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