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高低差のある岩場を乗り越えると、彼は「お腹が空いただろう」と言って宝盗団の拠点にて何やら料理をし出した。私は、木箱の上に置いてあった布を被り、その隙間から彼の様子を見守る。
彼に聞きたいことは山ほどあった。けれど、声を出す気力もなくて、それより考えたいことは沢山あって、それでも彼が私の味方であることは容易に分かった。
「食べてみろ。味は保証する」
彼が差し出したのは、良い香りが立ち込める煎餅のようなものだった。彼の得意料理であるこれは、米に肉やドライフルーツを混ぜてヨーグルトと一緒に焼いたものらしい。
一口かじってみると、ぱりっという音がして、旨味と風味が口の中に広がった。美味しいという言葉と、料理を提供してくれたことに対してお礼を言いたかったけれど、上手く声に出せなかった。
「……？これは何だ？」
私が差し出した本を認めると、この状況が理解できないと言ったように私を見つめるのだ。
「…父、が……」
「お前の父がお前に渡した本なのか？だとしたらお前が持っているべきだ」
特段装丁なども施されていなく、ただ簡素に研究記録と書かれているそれは、恐らく父が集大成として進めていた研究の過程について事細かく書かれていたものだった。
学者になりたいという夢を抱えていたから、父の研究を託されたのあれば受け継ぎたいと思う一方で、自分には大きすぎて相応しくないとも思う。
「資格が、ない」
「………」
「持つべきじゃない」
だから受け取って欲しいと突きつけるように彼に差し出すと、「分かった」と折れてくれた。
本を受け取ってもらい安心する私に、「ひとつ」と人差し指を立てた左手が口の前に置かれる。
「今はこの本を持つ資格がないと思っているかもしれないが、いずれ自分で認められるようになるだろう」
「……っ、そんな…」
「この世には成長しない人もいれば、する人もいる。お前は後者だ」
だからその時が来たらこの本を返す。彼はそんな約束を持ちかけてきた。
私は彼に、もしまた会うことがあれば自分に自信を持った状態で会いたいと思うのだった。
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咲原(プロフ) - まるさん» 読んでくださり光栄です。。！ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)！ (8月13日 12時) (
レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 最高でした！！お疲れ様です！ (8月13日 6時) (レス) @page48 id: 626fa9ab7b (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - あいうさん» ご覧頂きありがとうございます！元ゲームの雰囲気を壊さずに慎重に書いていましたのでそう言っていただき光栄です……！自分らしく執筆を頑張りますね！ (2023年2月21日 16時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
あいう - セノの小説あまり無かったのでめっちゃ嬉しいです！話しも自然ですごいです。めっちゃ好きです。自分のペースで更新頑張って下さい！応援してます！！ (2023年2月20日 1時) (レス) id: 914ffe60d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲原 | 作成日時：2023年1月19日 12時
