・ ページ2
・
いつまで経っても樹には私が心配みたいで。
樹にばかり負担をかけていないか。
それが不安になった。
窓の外に見える駅から電車が出発するのが見える。
物件を決める時、3つある候補の中から一番駅に近い場所を選んだ理由。樹はここは二階だしやめておこうって言ったけど、私はここが良いと言い張った。
樹は気づいてるかな。
少しでも樹の通勤時間を
減らしてあげたくてここにした事。
周りに階段がちょっとだけ多いけど、
樹はフラッとコンビニに寄ることが多いからここにした事。
窓の外を走る電車は、私が樹にできた唯一の優しさの証。
2人で買ったオレンジジュースを喉に流し込むと
果汁100パーセントの酸っぱさと爽やかさが
鼻を突き抜けて消えていった。
樹はようやく戻ってきて。
ソファに腰を下ろして体の力を抜いた。
ふぅ、と息をこぼす姿から
朝から一人で整理をしてくれた
貴方の気遣いが見えた。
「ねぇ、樹」
樹「んー？」
「小っちゃかったかな。このソファ」
樹が座るとどうしたって近い距離。
部屋のサイズ感に合わせても
少しばかり小さく見える。
樹「うーん、いいんじゃない？」
「そうかな」
樹「うん。Aと近くにいられるし」
樹は私の持ってたオレンジジュースを自分の額に当てて『ひゃーつめてぇ！』って楽しそうだけど、私はそれが貴方の照れ隠しだと知っている。
「…そうだね」
樹「おう」
樹は私以上に自己犠牲が酷いから。
少しだけ出てくる甘えには寄り添ってあげるんだ。
私が辛いときにずっと傍にいてくれたように。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひじり
| 作成日時：2020年7月5日 18時
