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Taiga side
ガラガラと音が聞こえて、居るはずのない人が現れる。
「ジェシー、どうしたの。
今日登校禁止だよ。」
「窓から大我が見えたから。」
俺に対して何も飾らず、
俺に対して何も求めないこの人が、
俺は多分好きなんだ。
今だって、俺を見つけてここまで来てくれたことが、どうしてか嬉しかった。
「ねぇジェシー、
誰かに恋をするってどう言うことなのかな。」
この質問を投げかけた時、
心臓が音を立てていた。
これがトキメキなのか、緊張なのか、俺にはいまいち分からない。
「…周りが見えなくなるものだと思う。
自分も、周りも、全部見失ってしまうくらい。
波みたいに不安定で、
時に人を傷つける事も厭わない。」
…素敵なものの話には聞こえなかった。
「大我。俺さ、理解は出来ても憧れないんだ。」
「ジェシー…、」
「そんな風に思うのも、思われるのも、
重たく感じてしまう気がする。」
…違かった。
「自分の感情に誰かを巻き込むのが恋なら、俺は多分、一生分からない。」
俺のこの感情は、そんな大それたものじゃない。
この時、俺は恋を諦めた。
それと同時にこれを恋だと思い込んでいた自分が恥ずかしくて。
ジェシーの寂しそうな表情にも気づかず、
『そうだよね』なんて、同調してみせた。
＿＿
＿＿＿＿
多分あの時、ジェシーが欲しかったのは同調じゃない。
『いつか 誰かが現れるよ』
という、希望だった。
根拠なんてなくたって、そう言ってあげるべきだった。
俺は、友達としてでも、ジェシーを分かってあげられなかったような気がする。
「…ごめんね、」
思わずつぶやいたごめんねは、また今度、あいつに直接言ってやろう。
そしてちゃんと、
『俺は恋してるぞ。お前にだってできる。』
と言ってやる。
ガラガラと大きな音がする。
振り返るとその人は、幸せそうに笑ってみせる。
「樹、どうしたの。
今日来ないって言ってたのに、」
「へへっ、やっぱ来ちゃった。」
恋を放棄したこの場所で、
俺はこの人と出会い、恋を知った。
笑えないくらい悩んで逃げて、
「ねぇ樹、恋をするってどういうことかな。」
結局俺は、樹といる毎日を選んだ。
「なに急に。
それは自分で決めることだよ。」
「…そうだね。」
うん。大丈夫だ。
俺は今、恋をしている。
樹、に恋をしている。
end
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作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
