40/ ページ42
・
放課後の俺は、音楽準備室ではなく図書室にいた。
「なんでここ来んだよ。」
「いいだろ、別に。」
「茶髪が目に入ると集中できない。」
「…もしかして俺、似合ってない、？」
北斗はすっかりいつもの毒舌に戻ってしまったけど、俺ももう通常運転なわけだから何のダメージもない。
「北斗に報告したいことがあるんだ。」
「なに、」
変にかしこまる俺を気味悪そうに見てくるけど、俺はそれが北斗の愛情の裏返しであるという事も知っているから。
若干の緊張もありつつ、思い切って告白した。
「…きょもと、付き合うことになった。」
北斗はあの日から、きょもの話は絶対にしてこなかった。
俺がきょもと仲直りしたのにも気付いているはずなのに、それでも俺が言うまで触れていない。
それが北斗の優しさだと知っていたから、俺はちゃんと伝えたかった。
「そっか、良かったね。」
「うん。ありがと、」
きょもに出会う前に、俺は北斗と出会った。
北斗は最初から正しくて、強くて、優しかった。
そんな親友に、良かったねと言われたら
感動してしまうのは仕方のないことじゃないかな。
「俺、受験の日、熱出してよかったかも」
「なに変なこと言ってんの。
顔色最悪だったからねあの日」
「でも、あれがなきゃ友達になってないだろ？」
「…まぁ、多分。」
俺の運命の相手はきょもだけど、きっと北斗も、俺の運命なんじゃないかと思う。そういう意味だと、ジェシー先輩もきょもにとっては大事な人なんだよな。
「ぁ、そう言えば北斗、ジェシーせんぱ＿＿＿」
「＿＿＿ 北斗、！」
俺の声をかき消すように聞こえた声。いつも人に囲まれているジェシー先輩が、一人で現れた。突然の出来事に思わず身が固まる。これは本能だ。魔王の前では誰しも若干はビビる。
北斗はそんな先輩を前に、平然と会釈をして見せた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 364人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
