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Juri
四限が終わるチャイムが鳴った。
先生の指示も待たずに席を立って廊下に飛び出す。
教室では北斗が呆れたように俺を見送る。
俺の親友は、ドライなんだかどうだか。北斗に向かって手を振りながら走ると、『前見ろ、アホ』と小声が聞こえた気がした。
『田中！廊下を走るな！』なんて叱られつつも、足取りが軽いんだから許してくれよ。
遠くの方に見えた長身のイケメン、もといラスボスと目が合った気がして。思わず立ち止まると、『樹！今度は俺の番ね！』なんて、もうすっかりラスボスの仲間入りだ。
階段を上がって、走ればすぐ。
立て付けの悪い扉の向こうにいる君に会いたくて、思い切り手をかける。
「うぉ、！びっくりした。」
「お待たせ！きょも！」
「…待ってないけど。」
パックの牛乳に口をつけながら、俺を見て驚いたきょもは、年相応の男子高校生って感じがする。
そしてこんなに急いで来た俺よりも先にここにいるということは、つまりそういう事だ。
「きょも、またサボったんでしょ。」
「…だって今日テストだし、」
「うん。尚更だめだね。」
きょもと出会って、あしらわれ続け、
色々あって勘違いして、お互い逃げて、
やっとの事で元に戻った俺たち。
それでも、あの時間は必要だったんじゃないかと思う。
「それにしても、態度戻るの早くない？」
「確かに。昨日の今日だし、」
あまりにもいつもの俺たちで忘れそうになるけど、俺ときょもは、純粋に元に戻った訳じゃない。
「まぁ俺は、きょもにはいつも優しいからね。」
「ふーん、急にそっけなくなったくせに。」
「あれはきょもが先輩と…、」
「ん、先輩？」
「いや、なんでも、」
あの後ちゃんと、二人の間で何があったのかを聞いた。
「…もうジェシーのことは気にしないで。」
「、ごめん。」
「俺も気にしないからさ。」
ものすごく端的にまとめると、きょもと先輩は今も昔も、友達だと分かって、
「ねぇきょも。」
「ん、？」
「…俺に落ちた感想は？」
そして、この人は俺に、ようやく恋をした。
「固まってないで答えてよ。」
俺が初めて必死になって追いかけたこの人は、想像以上にややこしくて面倒臭いひとだったけど、それでも俺に、その微笑みだけで幸せをくれる、素敵な人だ。
「…悪くはない、。」
俺はこの時、改めて誓ったんだ。
俺の全部で、君を愛す。と。
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作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
