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面接の内容は、中学でやった練習とさほど変わらない。
目の前にいる2人の先生にも、
今のところ悪い印象は与えてないはず。
順調にいくつかの質問に答えていると
視界の隅に人影を見つけた。
あれ、誰かいる＿＿ ？
校舎の4階。隅の方。
透き通るようなその人は
じっと見ないと存在を実感できない。
顔ははっきり見えないけど
とにかく 綺麗 だった。
「…田中くん？」
「ぇ、あ、すみません。えー そして＿＿、」
一瞬目を奪われてしまったけど、
一応 俺の人生がかかってるわけだから
あの人の事が気になりつつも
先生の顔色に意識を向けた。
「田中くんが今一番大切にしているものはなんですか？」
「大切にしてるもの、ですか」
「なんでもいいよ。思い浮かぶもの。」
予想外の質問に 答えが詰まる。
思い浮かぶのが 一つしかなくて。でもそれが 答えとして正解なのか分からない。
恐る恐るブレザーの胸ポケットに手を当てて言葉を紡いだ。
「お守り、です。」
「お守り？」
「今日、祖母がくれたんです。
人生がかかるくらい大事な日に、
生きて帰っておいで。って
合格祈願 でも 学業成就 でもなくて
"健康祈願" のお守りをくれる祖母を
心から 誇りに思います。」
この答えで、大丈夫だっただろうか。
学校や自分のやる気に関係の無い話をしてしまった手前、的外れだった気がして自信が無くなる。
目の前の強面の先生が
俺を見て 目尻を落とした。
「…そんな顔も出来るんだな」
「え？」
「あー、いやいや。なんでも」
その言葉の意味は
よく分からなかったけれど、
視線を動かして校舎の隅を見ると
あの人と、目が合ったような気がした。
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作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
