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先輩から直々に呼び出されるなんて、ちょっとした騒ぎだ。二年のフロアに先輩がいるってだけで、廊下に出てくる女子にこの人の強さを感じた。

「なんか、見られてるね。」

「へ？あー、はい、」

「屋上か校舎の端の方、どっちがいい？」

先輩は人の目がなるべく無い場所を提案してきた。直感だけど、この人は凄く賢い人だと思う。
話したくないし、一緒にいたくもないのに、なんでか会話に乗せられる。

結局、屋上にたどり着くまでに、俺が受けてる授業の担当教師、誕生日、血液型まで知られてしまった。

…この人、すげぇ。

「ごめんね。突然呼び出して、」

「いや、」

「俺、ジェシー。三年です。」

散々俺の情報を聞き出しておいて、この人の自己紹介は名前と学年で終わった。

「樹くん、…樹でいい？」

「ぇ、いや、」

「樹は大我が好きなんだよね。」

呼び出した。ということは、何か用があるということ。その中身は、なんとなく分かっていた。
でも、その問いにどう答えれば良いのか、先輩を前にしてますます分からなくなって。

「…好き、です。」

「そうなんだ。他にはいない？」

「は？」

「いや、気になっちゃって。」

人並みに照れ笑いを浮かべる先輩はどこか人懐っこそうだけど、やっぱり身長と雰囲気も相まってオーラがある。

「大我と、なんかあった？」

その問いかけに、きょものジェシー先輩といた時のあの表情と『いるよ、ひとり』と答えた寂しげな声色が蘇る。

この人はきょもの気持ちに気付いていないのか。

気付いていてこのままなのか。

そう思うとさっきまでのビビってた自分が嘘のように、落ち着いてきた。ライバルとせっかく話せるんだ。

自分にとっても、大事な時間だと、覚悟を決めた。

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