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ジェシー先輩。

去年の生徒会長で、なにかと目立っていたのを覚えてる。きょもとは違う意味で有名で、誰が見ても優しい人。

男女共に人気で、先生からの信頼も厚い。一人でいる所を見た記憶が無い程度には人望があるみたい。

どうやら俺はあの人を、越えないといけないらしい。

北斗に打ち明ける一日前。

朝、昇降口の前辺りできょもを見かけた。

朝から会えるなんてツイてると、浮き足立った俺はその足を向かわせる。でも、たったの数歩で歩みを止めた。

「大我。おはよう。」

そう言って自然に声をかけたのがジェシー先輩。
今まで二人が一緒にいる所なんて見たことがなかったから、尚のこと驚いた。

「…珍しい。一人なんだ。」

「うん。大我は相変わらずだね。」

「…、いいだろ別に。」

そこには少しの違和感も無くて、二人の空気は自然だった。

クラスも違うのに、交流があったのか。
あるとすれば俺が入学する前だ。

「じゃ、頑張って。」

「ジェシーもね。」

自分の知らないきょもがいるのがどうにも嫌で、空気をぶった切ろうと駆け寄る。…いや、駆け寄ろうとした。

きょもの下駄箱の前。先輩はわざわざそこまで送った後、去り際に頭にその手を乗せていった。

一部始終を見ていた俺に先輩は気付いたのか、優しい顔のまま、俺に微笑んでみせた。

とんでもない角度から思い切り殴られたように頭が揺れた。

「…樹、？」

「ぇ、あ、北斗」

「なにしてんの。」

「、別に、」

「そこ邪魔だから。
　さっさと行くよ。」

「ぁ、…あぁ」

登校してきた北斗に促されるように歩き出す。
横目で見た君は、その場で固まり、そっと頭に手を乗せていた。少し苦しそうなその顔に、心臓が潰されたような痛みが襲う。

" …いるよ、ひとり。 "

俺は、もうこの人には何をしても届かないのではないか。
そう思ってしまう程度には、突き付けられた気がしたんだ。

きょもと俺。一度に二人を立ち尽くさせる先輩は、ただものではない。

そんな人が、俺の壁だという事実に
ゲームオーバーの文字が過ぎった。