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聞こえてはいないだろうけど、まるで聞こえたかのように不機嫌な君。
嘘だろ。なんで怒ってんの。
慌てて機嫌を取るようにして俺が笑うと、その口を動かして言葉を伝えてくる。
＿＿ 、 、 ＿＿
…うん。びっくりするくらい何言ってるか分からない。
多分だけど、文句だよな。
丁寧に文句であろう言葉を頑張って伝えようとしてくる君と、君の言葉なら文句でも必死に読み解こうとする俺。
「…ふふ、」
この人は本当に年上なんだろうか。
なんというか、
その姿は小動物ではなくて、
肉食動物の赤子のようだ。
恐らく文句を言い続けているであろう君は、俺に夢中で気づいていないみたいだけど、体育の先生が真面目に見学していない君をジッと見てる。ほら、上から見る校庭って結構視界が広いから。
きょも、まずい。気付け。
俺なりに必死に指をさす。
教室にいる先生にバレないように控えめに。
＿＿ せ、ん、せ、い ＿＿
でもそれでは上手く伝わらなかったから、すぐさま口パクに切り替えた。
何かを伝えたいのは分かったみたいで
『なに？』と俺をじっと見る。
＿＿ み、て、る ＿＿
＿＿ う、し、ろ ＿＿
なるべく伝わるように大きく口を開けてみる。
まずいよ。先生向かってきてるって。
早く気付いて の念を込めて、大袈裟に動かす。
するときょもは一瞬目を見開いて、慌てて俺を指さした。
ん、俺？
と自分を指さすと、ぶんぶんと大きく首を横に振る。
なに、後ろ？と思って振り返ると、
さっきまで黒板に張り付いていたはずの先生が
俺の後ろで黒い笑みを浮かべて立っていた。
｢田中。｣
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作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
