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side Juri
目が離せなくなる瞬間を
俺は 今 まさに 体験している。
まつ毛が伏せられ、体からは力が抜けている。
つまり、きょもは今、寝ているという訳だ。
午後4時。音楽準備室。
いつものように立て付けの悪いドアを開けると、珍しくきょもは寝ていた。
このドアの音で起きないのだから、余程深く眠っているんだろう。
寝てる君を 起こす気にはなれなかった。
隣に椅子をそっと置いて、きょもの頭を肩に乗せる。眉毛に力が入ったように思えたけど、それはすぐにまた力を抜いた。
普段から誰にも隙を見せないこの人が
今、隙だらけで眠ってる。
そんなことがあっていいのか。俺が、この人の隙を見てもいいのか。
よく分からない葛藤が脳内で数回行われた後、潔くこの状況に飲み込まれる決意をした。
「…んぅ、」
目が覚めたのかと思った。
息を止めて体を硬直させ、様子を伺うと、その目はまだ閉ざされたまま。…まだ寝てる。
別に今更純朴な少年を気取るつもりはない。
好きな人が隣で、俺の肩で寝てるんだ。
自分で作った状況とはいえ、緊張の度合いが違う。
今日 体育なくて良かった、。
きょもみたいに常に良い香りが漂ってる訳じゃないから、幻滅されてしまう。
埃っぽい空気を吸うと、少しだけ落ち着いてきた。
それ以上に 寝ている君の可愛さを見れる余裕さえ出来てくるくらいだ。
「……きょも、」
「……」
「…なんの夢見てるの？」
寝てる君には 絶対に聞こえない。
「…呼んでよ。俺の事。」
「……」
「…だよね、」
「……」
「、…聞こえてる？」
「……」
寝ているこの人は、いつもより透明で
肩の重みがないと信じられないくらいには綺麗だ。
目が開いて俺を見つければ、綺麗な顔から 少しばかり面倒くさそうな声が聞こえる。
そんな、俺の恋する彼の寝顔を
自分の目に焼き付けて、
「…大我。好きだ。」
聞こえないのをいいことに、
カッコつけてみたりした。
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作者名：ひじり
| 作成日時：2020年11月1日 22時
