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玄関の前に立つと、呼吸を整える。…可能な限りの早歩きでここまで来たことがバレたら、羞恥心で確実に寝込む。
インターホンが軽快な音を知らせると、
ドアの向こうから凄い音がして、
ドタバタという音と共に勢いよく扉が開かれた。
……なんでそんなヘトヘトなの。この人。
「…なにがあった。」
「へへ、ちょっと掃除を…、」
「お前は馬鹿か。」
「だって先生が来そうだったから、!」
電話が終わってから一心不乱に掃除をしていたらしいジェシーは、随分と汗をかいている。
顔も、心做しか赤くみえるし、。
ひとまず玄関に入って荷物を置き、空いた手でジェシーの額の温度を測る。
動いたせいか額にもじんわり汗が滲んでいた。
「熱、高いじゃん。」
「…へへっ、さっきまで元気だったんだけど、」
「嘘つかない。」
「ごめんなさい。」
『でももう随分治ったの!』と訴えるジェシー。
今日ばっかりは君に手のひらで転がされる訳にはいかないから、流されないように強く気を張る。
立っているのも辛そうなジェシーをベッドまで連れて行って、タオルで簡単に汗を拭った。
「冷蔵庫借りるよ。」
「…うん、」
返事に覇気がない辺り、相当辛いんだろう。
買ってきたものを急いで冷蔵庫に入れると、水を持って君のもとへ急いだ。
「薬は?」
「…さっき飲んだ。」
「そっか。お腹は?」
「…すいてない、」
喋るのも頭に響いてはいけないから、それ以上は聞かなかった。
熱が上がったのは十中八九、いや絶対に
急遽開催された掃除大会のせいだろう。
開いたタンスから掃除機が倒れていた。…この男はこの期に及んで掃除機までかけたのか。
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作者名:ひじり | 作成日時:2021年4月8日 14時