Sanctuary <Jesse×Hokuto> (ページ18)

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思うように筆が進まないことを、
彼のせいにしてもいいだろうか。

四日前。夕方には来ると言っていたジェシーは、夜になっても現れなくて。
その日の夜中『ごめん。突然バイト入っちゃって』と連絡があったものの、それから今日まで何の音沙汰もない。

…なにかあったんじゃ、。

そう考えると集中がプツリと切れて手が動かなくなった。

誰かさんのおかげで明後日書き上げる予定だった原稿はあの日以降ほとんど埋まっていない。

…これは確実に怒られるやつだ。

でも書けないものは書けないし、中途半端な言葉たちを送り出すなんて俺には出来ない。

「…ふぅ、」

気になって書けないのなら、その原因を解決するしかない。

俺は、書斎ではほとんど触れることのないスマートフォンに手を伸ばし、ロックを開けた。数少ない連絡先からジェシーの文字を探す。

すぐに見つかったそれをタップし、電話をかける。
いつまでも鳴り続ける呼び出し音に、不安がよぎった。

『…、もしもし、！』

留守番電話に繋がる寸前で音が途切れ、いつもとは少し違う声がする。
俺だと名乗ると、『知ってるよ。』と笑っている様子だった。

『先生から電話なんて珍しいね。』
「あー、どうしてるかなと思ってさ、」
『先生のこと考えてた。』
「そういう事じゃなくて。」
『えー、本当なのに、』

あまりにいつも通りのジェシーに思わず拍子抜け。
俺のらしくもない心配は杞憂に終わったというわけか。
まぁそれが一番良いことなんだけど。

「最近忙しいの？」
『んー、まぁそんなところ。
　先生こそ、今月は大変でしょ』
「…もしかして、気使わせた？」
『まさか。』
「でも、なんか変だよ。」

何も無いのが一番良いのは分かってる。
けど、人は望んだように物事を見てしまうから。

ほんの少しでも感じてしまった違和感を、俺の気のせいにしてはいけない。

「ジェシー、ちゃんと言って。」
『え？』

「残念ながら俺は
　君の異変に気付けないほど鈍くない。
　そしてそれを放っておけるほど
　適当に君と接してもいない。」

ジェシーは隠すのが上手い。
でも、きっと俺は、隠れた君を見つけるのが上手いと思うんだ。

それは君も、一緒かもしれないけれど。