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俺の知らないジェシーは、以前もこうやって誰かと過ごしていたんだろうか。
「…先生、ヤキモチなら幾らでも大歓迎だけどさ、
今日のはちょっと違うかも。」
「どういうこと?」
バツが悪そうな顔をして、少し照れた様子の君は、やっぱりどこにでもいる大学生だ。
「久しぶりのデートに舞い上がっちゃって、
沢山考えたの。
でも先生"普通のデートがしたい!"って言うでしょ?
普通っていうのが分からなくてさ、
なんか気付いたら
色んな人に手伝ってもらっちゃって、
先生のために、頑張って普通のデートにした。」
『それに、先生に会った時に今までの俺は消えたから』
そう言ってのけるこの人は、それで俺がなんとも思わないとでも思っているのか。
俺の為と言ってジェシーを手伝ってくれた色んな人達に、何も感じないと思っているんだろうか。
嬉しいような、それでいてムカつくような、自分でも言いようのない感情が駆け巡った。
でも、せっかくのデートだ。
今は消極的に考えず、楽しんでみよう。
これまたタイミング良く届いた飲み物に、二人して口をつける。
どうやら俺も今日はテンションが高いらしい。
久しぶりに飲んだシュワシュワという感覚に
思わず心が弾むのが分かった。
「ねぇジェシー、
ロールケーキも食べていい?」
「もちろん。」
ケーキを頬張りながら話す俺を、ジェシーはたまに飲み物を飲みながら、ほとんど何も言わずに見つめていた。
いつもの書斎でジェシーとは違う、静かで波のない海のような君だった。
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作者名:ひじり | 作成日時:2021年4月8日 14時