明日，君のいない世界で。 (ページ10)

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大「お疲れ様でした」

今日のアルバイトも終わって，店を出る。
電源を落としていたスマートフォンに，電源を入れる。

メールボックス画面に並ぶ「選考結果について」「第2次選考の結果について」の文字に，心拍数が跳ね上がるのを感じる。

どうか，一社でもいい。「採用」の二文字がほしい。

メールを一通ずつ開封していく。
不採用，不採用，不採用。……不採用。

今日届いていた4通のメールは，全て不採用通知だった。

『末筆ながら，京本様の今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます』で締めくくられたお祈りメール。馬鹿じゃねえの，なんて乱暴な言葉がつい口から漏れる。

益々のご活躍ってなんだよ，誠に遺憾だなんて思ってもいないくせに。
もう全てが嫌になる。

就活のために黒く染めた髪の毛をクシャクシャと掻く。

その時，スマートフォンが震えた。
ディスプレイに表示される「田中樹」の文字。大好きな恋人の名前を目にするだけで，少しだけ気持ちが明るくなる。すぐにスワイプして，電話に出た。

樹「もしもし，きょも？」
大「あ，うん」
樹「まだバイト先？」
大「今上がったとこ。今から帰る」

じゃあ迎えに行くよ，とどこか嬉しそうな声がする。
電車で二駅の近場だし，女の子じゃあるまいし。別に迎えなんかなくても帰れるけど，せっかくなら恋人に甘えたい。

樹「10分くらいで着くと思う。寒くないようにして待ってて」
大「うん。ありがとう」