明日，君のいない世界で。 (ページ40)

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支えられて着いたいつもの部屋には，一人の先生と二人の看護師がいて。

ジェシーは，眠っていた。

最近の君には珍しく，穏やかな顔だった。

北「……ぇ，」

君の後ろの画面に写される『0』の数字に，目の前が真っ暗になる。

そんな…，そんな，。

慎「松村さん…，」

目の前だけじゃない。
頭の中も，何もかも，見えなくて。

慎「朝は，特に異変はありませんでした。」
北「…ジェシー，」
慎「…っ，今日は北斗が来るんだ…，って，嬉しそうでした，」

もう動かし方も分からない自分の足が，勝手にジェシーの元へと向かっていく。
吸い込まれるように，ジェシーの元へ辿り着いた。

ただ寝ているだけのジェシーの頬に触れる。

…おかしいな。いつもより冷たいんだ。

北「ねぇ，」

俺は一体，誰に問いかけているんだろう。

北「…まだ，聞こえてるかな。」

誰に何を，聞いてるんだろう。

慎「松村さん，ジェシーさんはもう…，」
北「人が最後まで残ってるのって聴覚なんでしょ。」
慎「っ，！」
北「もう，何も聞こえないか，。」

俺のどうにもならない悲痛な想い。

しばらく俺の様子を見ていたけど，ほとんど動くことをしない俺を見て，医師も森本さんも，そっと部屋を後にした。

俺がいる時はいつでも笑っている君の表情は，目を閉じたまま，これっぽっちも変わらなかった。

北「…どうせまた具合悪いのに誤魔化したんでしょ。」

嘘。そんなことするはずない。
この人がそんな命を大切にしないはずない。

北「今日はジェシーと屋上で桜見ようと思ってたんだよ。昨日の電話で見たくなってさ，」

ううん。君に言いたいのはこんな事じゃない。

北「そろそろ散っちゃうからさ，今年の桜は上からで我慢しようって言おうと思ってたのに。」

でも，こうでも言わないと
絶対に泣いてしまうから。

北「俺一人で見ても拗ねないでよ。」

きっとこの人は，俺が泣かないかを心配したまま死んでいったはずだから。

だから俺は，今，君の前で，
絶対に泣く訳にはいかないんだ。

余裕な顔してないとダメなんだ。

北「本当に，お疲れ様でした。」

でも，どうやったって引き攣る口角は，ヒクヒクと上下に細かく揺れていって。最後には笑顔を保っていられない。

それでも，とにかくいつもの自分らしく。

ジェシーと話しているように語りかけた。