明日，君のいない世界で。 (ページ35)

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北「ねぇ何してんの。」
ジ「ん？録音。」
北「…うん。それが気になってるんだけど，」

病室で過ごす昼下がり。
食欲の無いジェシーは昼食のほとんどを残していたけれど、元気はあるように見える。

入院から，二ヶ月と半分が過ぎようとしていた。

その手にはスマホが握られ，慣れない手付きで何やら頑張っている。どうやら録音アプリを入れようとしているみたいで。面白いから元から録音のアプリがあることは教えてあげない。

そんでもって俺の素朴な疑問には，得意げな顔で答えてみせる。

…顔色は，最悪だった。

ジ「明日から北斗，来れなくなっちゃうでしょ。」
北「仕事が終わったら来るよ。」
ジ「別に寂しい訳じゃないってば。」
北「じゃあ何，」
ジ「せっかく一人なんだし，北斗の声録音して聞くの。」

そう言いながら操作する画面の中では，もう見た事も無いような(なんなら日本語でもない)代物をダウンロードしようとしている。…大丈夫か。

北「…ばかじゃないの。」
ジ「なんでよ！」

嬉しそうな顔でそれを言われて，
俺はなんと返せばいいんだ。

北「…、っアプリ入れなくてももうあるから，」
ジ「え、そうなの？」

結局教えてしまった。『おー！さっき見てたやつより良い！』なんて喜ばれてるけど，この人は一体何を入れるつもりだったんだ。