明日，君のいない世界で。 (ページ17)

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朝起きると，コーヒーの匂いがした。

北「…ジェシー？」
ジ「あ，北斗おはよう。」

リビングに出るとジェシーはテーブルに置いたコーヒーをぼーっと眺めていた。

まだ酔いが覚めていないのかとも思ったが，態度からしてそうでもないみたい。着替えているからちゃんとお風呂にも入ったんだろう。

マグカップの中の黒色からはもう湯気がたっていない。寝室にまで届いたコーヒーの薫りは，おそらくまだ電源の入っているキッチンのコーヒーメーカーだろうか。

ジ「昨日はごめんね，迷惑かけた。」
北「大丈夫だよ。」
ジ「ありがと。」
北「付き合いも大変だよね。」
ジ「あー，…うん。」

いつもよりちょっとぎこちない朝に，俺は出来る限り普通を貫く。

北「どうしたの，コーヒーなんて。」

君は俺の質問に，困ったように笑った。

ジ「へへっ，なんとなく，」
北「変なの。」

対面の椅子に腰を下ろして，ジェシーのマグカップを手に取って代わりに口付けた。もう冷めきったあの味が，酷く懐かしく感じる。

どうやら，懐かしく感じたのは俺だけじゃないみたい。

ジ「…俺さ，初めて北斗を見つけた時，びっくりしたんだよね。」
北「なに，いきなり。」

なんでもないただの休日の朝。
音楽が好きな君と，静かな空間で本を読むのが好きな俺。
一緒に暮らしてからそれが原因で何度か喧嘩したな。なんて，なんでか今ふと思い出した。