-Hasta la vista.7- <Yuto×Ryosuke>

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裕翔の目は、もう覚悟を決めたようにぶれなかった。



俺を抱きしめながら『離れたくない』と
そう言った。






俺の言ったこと、忘れてるんじゃないかな。

もう死ぬかもしれないのに。

裕翔にとっては、いい事なんてひとつもないのに。









｢…俺 の話、聞いてた…？｣


裕｢うん｣


｢もう…治らないよ？｣


裕｢治るよ｣


｢っどこに、そんな確証が＿＿！｣


裕｢＿＿俺がいる。｣


｢っ、｣







裕翔の声はね、いつだって
俺にはフワフワで優しくて、心にトンって届くんだけど、

今のはドンって、直球で俺にきた。









｢俺がいる…って、｣


裕｢俺がそばにいるから｣


｢……馬鹿じゃないの｣


裕｢馬鹿じゃない｣





｢また 薬の治療が始まるかもよ？｣


裕｢俺も一緒にいる。｣


｢また 手術するかも｣


裕｢待ってる｣









｢俺が辛い時は？｣


裕｢隣にいて貰ってあげる｣


｢っ、俺が もう逃げたいって言ったら？｣


裕｢逃げたいって？｣


｢だから…その、
もう治らないなら病院から抜け出したい…とか｣


裕｢……｣







｢……連れてってよ。裕翔。｣









俺は、血迷っているんだろうか。

これすらも、病気のせいにしていいのかな。


常識人で優しい裕翔は、俺を連れ出そうなんて思わない。
考えたことも無いはずだ。



でも、今の俺がどんな状態なのかも分かっていない現状が辛くて。
裕翔と一緒に、逃げ出したいと思ったのは事実。

裕翔は、しばらく固まった。









｢……ごめん、変なこと聞いた｣



裕｢…連れ出すよ｣


｢え？｣







裕｢やまが 辛くて 怖くて 笑えなくなったら、
俺が連れ出す。｣





裕翔は、きっと本当に思ってる。
本当に、連れ出してくれる。

そう思うと、安心した。


あぁ、俺には、こんな人がついてるんだって。





俺の為に泣いて、俺の為に逃げてくれる人がいるんだ。って。








久しぶりに会った裕翔が、

離れた俺を戻してくれた。






怖くてどうしようもない毎日が、
少しだけ 軽くなった気がした。









振り返れば、

俺がこの病気になって、1年が経っていた。

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