-Hasta la vista.7- <Yuto×Ryosuke>

・ ページ35

・




裕｢先生 呼んでくる｣


｢っ、待って…！｣






席を立とうとする裕翔を思わず引き止める。
分かるんだ。きっと裕翔は、もう帰ってこないって。








｢……待って、｣

裕｢…うん｣





裕翔がさっき流した涙の意味は分からない。

どうしたらいいのかも、全然分からない。

でも、相変わらず優しいその目が
また俺を見てくれてるって思ったら

もう訳わかんないくらい嬉しくなっちゃったの。








｢裕翔 …手術のこと 黙っててごめん｣

裕｢……｣

｢勝手に 裕翔から離れてごめん｣






謝って何が変わるとは思ってない。
だけど、苦しくて重かった俺の心の中を
整理するためにはそれしかなかった。









｢……先生は 大丈夫だ って、言うんだけどさ｣

裕｢…うん｣

｢多分俺 もうダメなんだわ｣

裕｢ぇ、｣





｢退院した時から また体調がおかしくて
せんせも 母ちゃんも皆、俺に隠してる｣









……ホントは、分かってたの。


俺の体のことだもん。俺が1番よく分かってる。







そんな顔しないでよ。

裕翔が泣くところなんて、演技以外で見たくないよ。









｢分かってたんだ｣

裕｢やま でも＿＿＿｣



｢＿＿大丈夫だよ｣

裕｢っ、｣



｢だって、生きるしかないじゃん｣








そうだよ。今生きてるって事だけは
誰にも何にも変えられない。

生きるしか、生きる以外、選択肢はないじゃんか。









｢だから…、｣


裕｢…涼介。いいよ｣


｢っ、！｣








でも、でも今、
裕翔に会えた今、

裕翔が許してくれたから

この時間だけ…








｢裕翔、｣

裕｢うん｣





｢…怖い……っ、｣




裕｢……うん。｣









今だけ、泣くことを許してください。







裕｢…怖いよね。うん。｣




裕翔が抱きしめてくれると、もっともっと止まらなくなる涙を、


今だけは我慢しないで泣かせてください。









裕｢…やま。

俺、やっぱり……｣

・→←離れたくない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す