紅のストッパー 2

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『…すみません、わざわざ』

笑顔を作ってお礼を言ったあと、スタンドに向き直った。

『フォアボール出した時点でちょっとやる気が削がれたんですけど(笑) キクさんに助けられました』

「集まったカープファンに一言お願いします！」
『えー…歓声すごかったんですけど、優勝したわけじゃないんで！まだまだ声出して頂く予定なんで、よろしくお願いします！最後までありがとうございました！秋山さんありがとぉ！！！』


『来てたんスラィリー…え、ええの？』

まさかのご来場していた我らがスラィリーがしゃがんで背を向けてくる。
コクコクと頷く優しきバケモ…マスコットの背に乗らせて貰う。世界一気持ちいいおんぶだと思う。

おんぶされながらスタンドにいるカープファンに左手を振る。多く無いので距離はそんな無い。


そして一瞬、手を上に向けて振った。


ベンチ裏に戻ると新井さんに名前を呼ばれる。その後ろには、

『黒田さん』

少し目が赤い黒田さんからの言葉は、祝福のものでは無かった。

15「…ありがとう」
『……クロさんの、担当の人間としての、仕事です』

黒田さんの胸板に頭を押し付ける。そうでもしないと涙が出るから。


クロさんは、病室のテレビでこの試合を観ながら息を引き取ったらしい。最後の一球を見届けた直後だと言う。

25「明日、試合無いし遅く来てええから」
『はい、すみません』




ー翌日ー

18「おはようございまー…」
『おぉ、おはよう』
18「…」

9「やっぱAまだ来てないのね」
18「いや、いつも通り来てたんで仮眠室ぶち込んどきました」
9「……ん？」

――――――――――――――――――――――――
−8回表終了後−

25「A今19奪三振！」
『……なんですか？』
25「奪三振数。今日の」
『………はい？』
0「A！？」
33「大丈夫か！？」
31「頭回ってない！(笑)」

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