紅のストッパー 2

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黒田さんは、少し目を伏しながら話してくれた。


クロさんが結婚して子供が産まれたのが26年前。
奥さんとは高校の野球部とマネージャーの関係だった。

そんな中、家族に災禍が訪れる。

クロさんは当時東京の会社に勤めていたが、その会社の上司が奥さんを狙った。
もちろんクロさんは応えなかった。
あまりにしつこいので、クロさんは退社。家族で実家へ戻った。場所が近いこともあり、見つけた仕事がカープのスカウトだった。

しかし数年後、"元"上司は夫妻を探し出した。
クロさんの居ない間に家へ行き、奥さんと話したらしい。
中身は気持ちの良いものでは無い。

細かくは分からないが、簡単にすると「旦那の立場が惜しければ離婚しろ」。
そいつの権力はそこまで及んでいたのかは不明だったが、クロさんのことを優先した奥さんは言う通りにした。苦渋の決断だったろう。

結婚から9年。奥さんの旦那さんは別の男になった。
何度も会おうとしたが、その度に奥さんをチラつかせられ、断念した。

そしてその男とも離婚したという話を耳にしたクロさんは、奥さんに連絡をした。しかし奥さんは既に音信不通になっていた。



知らなかった。クロさんはあまり自分の過去については教えてはくれなかったから。




『……え？』

顔を上げた。

子供が産まれたのが26年前。

その9年後に奥さんが再婚。

その男とも離婚して、音信不通？


15「A」
『待っ…』
15「ケイはな」
『黒田さん、』

やめてください



15「お前の、父さんや」


その言葉は、音になることなく終わった。

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