紅のストッパー 2

球の宴 ページ2

秋山side

『あきゃーまさん』

この呼び方は、「構え」のサイン。

9「もうアップ終わったの？」
『はい』
9「A肩出来るの早いよね」
『最低3球投げれば行けます』

両リーグ最多得票で選出されたA。こないだの試合でも栗林の2勝目を決めるタイムリーを打ち、ヒロインで「栗林良吏を中継ぎに転向させるために打ちました」と語った。やめてやれ。

『…私もベンチおろうかな』
11「お、珍しい」
『総長』
11「やめて他のチームびっくりするから」

オールスター初選出の亜蓮が顔を出す。
実は元ヤン…らしい。ピッチングはその気あるけど。

そういえば俺がこのチームに来てちょうど1年くらい。
次第に皆のことも分かってきた。

『シャワーもバケツの取手持つけん不安定になるんですよ。ほぼ自分にもかかってたし』
9「いやあの文化に触れて来なかったから」
『でも最後野間さんのスパイクにかけたんは最高やったんで良しとしましょう』

満足気にふん、と笑う。お気に召したらしい。
特にAはイメージと結構違った。
登板中は印象通りの剥き出しの殺意と威圧感。でも慣れるとこんな感じ。最近イジりがキクより酷くなってきた。
まぁ、今回野手俺だけだからありがたいんだけど。

全体的にアップも終わってユニホームに着替えると、スマホが鳴った。

9「もしもし…え、うん。いるけど…俺はいいけど出てくれないと思うよ？…分かった」

言われた通りに彼女を呼ぶ。

『はい』
9「Aに電話」

表示された名前を見るなり「うへぇ」と声を漏らした。

G6［失礼やなぁ(笑)］

そう電話の主は怪我で来られなかった勇人。

G6［なぁ今日俺の打ち方してや］
『は？やですよ龍馬さんのせないかんのに』
G6［なんや浮気か！？］
『頭大丈夫ですか？』

相変わらず勇人に冷たい。

G6［ええやん背番号お揃いやろ？］
『違います源さんとお揃いです』

謎の主張を押し通し、半ば無理やり電話を切った。

9「…するの？」
『……さぁ』

そうAが流すとすぐに高津監督が来て、全体ミーティングが始まった。

･→←🔖

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す