紅のストッパー

帰国後の憂鬱 ページ6

Aside

『は』

朝ごはんの途中、流れてきたニュースに頭が一気に覚醒する。

写っていたのはつい最近対戦した、アメリカのマイク･トラウト。そのトラウトがインタビュアーに囲まれている。WBC決勝直後だ。

翔平さんとの対決のコメントを答えたあと、続けて彼が聞かれたのは、紛れもなく私の名前だった。


「あぁ彼女には驚かされた！またニッポンのベースボールクイーンと戦えることを願っているよ」



ニッポンの、野球の女王(ベースボールクイーン)。


立場上、「女王」と呼ばれるのは少なく無かったが、現役最強打者からはさすがに重みが違う。

『ひぇぇ…』

ナイスガイ過ぎて辛い…。

ビビり散らかしながら朝ごはんを済ませ、支度を急ぐ。
と、ふいにスマホが鳴る。

C27 ［ベースボールクイーン元気？］

しばこうかなこのアメリカンゴリラ。

元日本の4番･誠也さんからのメール。ムネの時は感謝しとるけどこれは別問題やぞ。

〚今見ました。ほんまにキツいです〛
C27 ［Aこっちですごいことになってるからね］

…は？なんそれ聞いてない。

目を見開いている隙にネットニュースのURLが送られてきた。

『嘘やん』

〈彼女の存在は生物学の敗北だ〉


〈我々はとんでもない選手を見逃していた〉


オールアルファベットで書かれた記事たち。
私生物学と戦ったことないんやけど。

C27［Aのファンも増えてるし、まぁホームランキャッチしたらそうなるよね］

いやそうなんやけど、決勝でトラウトのホームラン取っちゃったんやけど。

思わずため息を漏らし、ふと思い出した。

翔平さんとダルさんに「50は無い」と言われた体重。

本当に変わってるのだろうか。
今年で4年目。そこまで変化はない気がするけど、まだ時間あるし測ってみようか。

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