紅のストッパー

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でも母さんは言った。

「Aはなんでも分かるね。すごいね」

私は嬉しくはなかった。

『皆嫌って言う。私も嫌や』

こんなことになるなら、少しぐらい鈍感でも良かった。

母さんは少し考えた。

「もっと違うもん見よう。Aが見るべきもんが、絶対ある」

小学校を卒業しようとすると、山野親子は地元へ戻った。

単身赴任なのか離婚したのか分からない。多分後者。

母さんは父さんとの婚約指輪を外すことは無かったので、多分本当に愛してたのは父さんなんだと思う。

新居浜には親戚が居て、心配だからと一緒に住まわせて貰った。

試合の前日、母さんに言われた。

「…Aが打っとるとこ、見たいなぁ」
『！うん、打つ！絶対打つ！』


次の日、朝起きたら母さんは居なかった。


意外と頭は冷静だった。

おばさん達は慌てて心配してくれたけど、「大丈夫」と言って朝ごはんを食べた。

だから今は、母さんも知らない。音信不通と言うやつ。


済美の野球部監督から「野球部に入って欲しい」と言われ、戸惑いながらも嬉しくて入った。

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