紅のストッパー

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佐々木side

結局、試合はロッテが勝ったけど、あの球が164km/hだったらことを聞いてからいても立ってもいられなくなった。
監督に言ってベンチを裏から飛びだす。

M17「あ、Aさん！」

丁度廊下にいて、反射的に声をかける。

『おぉ、5勝目か、おめでとう』
M17「いや、あの、すみませんでした、ほんとに」

帽子を取ると慌てて止められる。でも絶対痛かった。当たった瞬間の歪んだ顔がすぐ蘇ってくる。明らかにカープベンチがピリついたし。
捕手だった佐藤さんにも俺に声をかけてくれるように頼んでたらしいし。申し訳ない。

『じゃあ、ほい、仲直り』
M17「…え」

なかなか引き下がらない俺に呆れたように笑って、広げられた両手。
これって、そういうことでいいの？

M17「無理、です。折ります」
『いや折るなよ』

ケタケタ笑うAさん。いや笑いごとじゃない！

『あー…嫌？』
M17「嫌じゃないです」

即答してしまうとまた吹き出される。Aさんに誤解されるのも嫌だし……なにより正直なとこしたい。()

M17「えと、じゃあ…失礼します…」
『ん、はい』

消え入るような声で了承を得たあと、ゆっくり背中に手を回す。
小さい、細い、でも柔らかい、いい匂いする。

後半アウトなことを考えてて必死に消し去ろうとする。

『気にせんと、お前が崩れたら私が嫌やわ』

優しく髪を撫でられる。鼓動が早くなる。でも、どことなく心地良かった。

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