第25話 ページ25
「好きだ」
彼の優しい低い声が響いて、耳の奥が熱くなる。
だから、なんで今そういうこと言うかなぁ。
今言うと弱みに漬け込んでるみたいだよ。
なんて、言いたい言葉は沢山浮かぶのに、溢れるのは涙だけ。
彼の言葉が、体温が、優しさが、暖かくて仕方がない。
私は縋るように彼の背中に手を回して泣き続けた。
その時、わかった気がした。
私が轟くんに、少し恐怖を抱く理由が。
彼の、こんなに真っ直ぐな愛情が、私には怖かったんだ。
真っ直ぐで、素直すぎる。
私はそんな愛情を、恋を知らなかったから。
ガラスのように冷たく割れてしまうのではないかと思っていた。
けれどそこは、触れてみるととても暖かく、私を優しく包んで離さなかった。
暫くして私は心が落ち着いていくのを感じた。
涙は引いて、少しだけ目が腫れた感覚がする。
不細工になっちゃっただろうな、と瞬きをしながら思う。
それでも、ずっとこの状態でいる訳には行かないから、轟くんに呼びかける。
「……轟くん」
「…なんだ？」
抱きしめあったまま私が彼を呼ぶと、離れる合図だと思ったのか返事をしながらも私を抱きしめる力を強くした。
離れたくない、とか思ってくれてるのかな…。
嬉しい…ことには、嬉しいんだけど、それ以前に……。
「熱くない？」
「……ん？」
「左側、めっちゃ熱くない？」
そこし体を離して、先程からずっと気になっていたことを指摘すると、轟くんは首を傾けた。
「…こっちはまだ調節が難しくてな」
「いやでも、頭から火出てるよ」
ほら、と轟くんの頭を指さすと、彼も目線を上にあげた。
轟くんの赤い髪からは確かに小さく炎が出ている。
いくら調整が難しいからと言って、彼がそこまで熱を使えない訳では無いだろう。
「顔も赤いし、もしかして…」
苦笑いをしながら彼と目を合わせる。
「……風邪、だな」
「だね」
早急に頷いてどうしようかと考える。
とりあえず雨宿りをしたいが、近くに雨宿りできそうな場所がないし……。
こんな事で悩んでいる間にも轟くんの病状が悪化してしまう…！
そんなことを呟きながら焦る私に、轟くんは冷静な声で言った。
「うち、来るか？」
「………え」
「俺の家、この辺の近くなんだ」
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なっつ(プロフ) - めっちゃハマりました〜！何回も読み直してます！続き待ってますね★ (2019年7月12日 8時) (
レス) id: 891cb8f982 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 轟君がピュアで可愛すぎる…！いいですね、ピュアろき君！更新楽しみにしてます！ (2019年7月3日 22時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨夜なつ | 作成日時：2019年5月24日 20時
