第24話 ページ24
轟くんは何も言わない。
返事をするのも面倒臭い話だったか。
そりゃそうだよね。
雨が降り続けている。
冷たい冷たい雫が、轟くんが暖めてくれた身体をまた濡らしていく。
ジャリ、と後ろから轟くんが動く足音がした。
その音が近づいて来ると思えば、轟くんは私の目の前に立ちはだかった。
何を言われるんだろう。
少し、怖かった。
けれど、彼はやっぱり、いつも少しズレている言葉を発するのだ。
「化粧、してんのか？」
俯いて見ないようにしていた彼の顔を、思わず見上げた。
え、今それ？
そう突っ込まずには居られない言葉だった。
けれども、彼は自分がズレていることなんて分かっちゃいないから、構わずに続ける。
「いつものお前も可愛いけど、化粧しても可愛いな」
その言葉に、先程よりも驚きながら彼を見つめる。
何を言い出すんだ、彼は。
「髪も、ふわふわしてて可愛いな」
指摘されて、自分の髪を見る。
雨で濡れ、しっとりとしたはずなのに、まだ少しだけくるくると踊っている。
「服も、いつもと雰囲気違って、新鮮だ。すげぇ可愛い。妖精さんみてぇだな」
「……妖精さんて」
こんどこそは本当に小さく突っ込んでしまった。
クールなイケメンって感じなのに、そんなことを口にするものだから思わず笑ってしまった。
それが合図かのように、胸の中で何かが弾ける。
頬に、水が伝った。
雨ではないと確かにわかった。
熱くて熱くて、どんどん溢れる。
彼は、メイクをしてるなんて気づかなかった。
服も髪も、何も言ってくれなかった。
可愛い、なんて、言ってくれなかった。
全部、結局は可愛いしか言ってないのに、その言葉がこれ以上ないくらい嬉しくて堪らない。
そんな気持ちとともに涙が視界を歪ませる。
溢れたら止まらなくて、次々と涙が頬を伝う。
泣き顔なんて見られたくなくて俯いた。
小さな嗚咽が雨の音と共に響く。
肩を引き寄せられたかと思うと、次の瞬間には先程触れた時よりも暖かい熱が私を包んだ。
轟くんに、抱きしめられている。
気づくのに、そう時間はかからなかった。
「好きだ」
はっきりと、それでも確かに熱を持ったその言葉は、私の胸の内を溶かすようだった。
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なっつ(プロフ) - めっちゃハマりました〜！何回も読み直してます！続き待ってますね★ (2019年7月12日 8時) (
レス) id: 891cb8f982 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 轟君がピュアで可愛すぎる…！いいですね、ピュアろき君！更新楽しみにしてます！ (2019年7月3日 22時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨夜なつ | 作成日時：2019年5月24日 20時
