第16話 ページ16
やばい。そろそろやばい。
せっかくの焼肉なのに全然食べる気にならない。
盛り上がっている家族を他所に、私は1人肩を落としていた。
すると、轟くんは心配してくれたのか顔を覗き込んできた。
「A、大丈夫か？」
「全然大丈夫じゃないよ！私今困ってるんだよ！？」
「そうか、困ってる顔も可愛いな」
ダメだ、この人話通じない。
今度こそ本当に盛大なため息がでた。
可愛いな、なんてこんなハイスペックイケメンに言われたら心臓バックバクなんだけど、本当に今はそれどころじゃない。
「こんなイケメンが義理の兄さんとか…姉ちゃん見直したぜ」
「そーね。高嶺の花って感じだものね、焦凍くん」
「じゃあ高嶺の花婿だな！」
「あああもう！！」
それだ！なんて言って愉快に笑っている家族にまでイラついて、私はついに声を荒らげた。
そう、ついに私の堪忍袋の緒がブチッと切れてしまったのだ。
「言っとくけど！私彼氏いるから！」
数秒の沈黙の後、カランと誰かの箸が落ちた音がした。
どうにでもなれ、と、私は今まで恥ずかしいからという今思えば可愛い理由で家族に隠していた秘密を暴露してしまった。
周りのみんなは唖然としていて、開いた口が塞がらない状態だ。
勿論、轟くんも。
「嘘じゃないからね。日曜もデートだし」
本当に、これは嘘ではない。
そう、平凡な私の唯一自慢出来ることといえば、中学の頃から付き合っている他校の彼氏がいることだ。
「だから…轟くんとは付き合えないし、結婚もしない」
何となく、彼の目が見れなかった。
みんなはまだ黙ったままで、何だかいたたまれなくなって私は席を立った。
「寝る！」
それだけ言って、私は自分の部屋へと引きこもってしまった。
せっかくの焼肉は、残念ながらふたくちしか食べられなかった。
ここまで来てくれた轟くんをお見送りしないのは礼儀正しくないけれど、今の私にはそんなこと出来なかった。
私はなんだか、彼が怖かった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なっつ(プロフ) - めっちゃハマりました〜！何回も読み直してます！続き待ってますね★ (2019年7月12日 8時) (
レス) id: 891cb8f982 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 轟君がピュアで可愛すぎる…！いいですね、ピュアろき君！更新楽しみにしてます！ (2019年7月3日 22時) (レス) id: 59138960e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨夜なつ | 作成日時：2019年5月24日 20時
