第29話 ページ29
・
外では滅多に嗅ぐことのない、なんとも言えない匂い。
無数の足音、話し声。
汚れなんてひとつもなさそうな白い壁。
柄でもない、右手に握った花束。
速いリズムで音を立てる俺の足。
先程聞いた番号の病室のドアをスライドすると、静かに開いたその先に、あいつがいた。
「おいコラクソ舐めプ女！！勝手に電話切ってんじゃねーよ！！」
「わぁ、爆豪くん！ほんとに来てくれたのねやったー！！」
ベッドの上で点滴を打って、何か小さな菓子を食べていた。
少し疲れたような顔でこちらに微笑み、点滴を指していない方の手でこっちへ来いと手招きをした。
「君なら来てくれると思ってたよ！さっすが爆豪くん！！」
「あ゛！？テメェはマジでクソだなクソ！！」
「ボキャブラリーどうした！まぁ落ち着きなさい、マカロン食べる？あ、爆豪くん甘いのダメだったか、あっはっは！！」
「いい加減そのうるせえ口閉じろやクソ女！」
俺が怒鳴っても、こいつは嬉しそうに笑うだけ。
そんな花咲に、心底呆れる。
だけど、机の上に乗っている手に繋がれているのは点滴の管。
それを、なんだか見たくなくて、目に入らないようにした。
「え、爆豪くんお花買ってきてくれたの！？やば…てか、爆豪くんが花束とか似合わなっ！」
「あ゛ぁ！？人がせっかく親切にしてやってんだろクソが！！」
「あはは、冗談だよ！ありがとう！」
楽しそうに笑う花咲に、手に持っていた花を渡すと、その花をまじまじと眺めだす。
「ガーベラ、か」
その花を大切そうに優しく抱え、俺の方を見て笑った。
「君らしいね」
こんなこと、認めたくねぇけど。
こいつの笑顔を見て、心のどっかで安心してる俺がいた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なしなつ - この作品は何回読んでも泣けるわ…;;好きな花言葉は紫宛の「君を忘れない」と忘れな草の「私を忘れないで」と千日紅の「変わらない愛情を永遠に」とこれは夢主ちゃんに合ってるかも…、カーネーション(白)「私の愛は生きています」…もちろんクチナシも好き (2019年9月15日 16時) (
レス) id: 567b9ad697 (このIDを非表示/違反報告)
雨夜なつ(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなって大変申し訳ありません！お褒めいただきありがとうございます。そうですね、ひまわりの花言葉は真っ直ぐな感じがかっちゃんらしくて素敵ですよね！感動していただきとても嬉しいです。ありがとうございました！ (2019年5月24日 21時) (レス) id: 32cfc3978e (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 一気に読ませて頂きました！感動して終盤泣きました。ラストのくちなしの花言葉やタイトルの伏線回収良かったです！！私もひまわり(あなただけ見つめています)好きです！かっちゃんみたいですよね(o>ω<o) (2019年2月22日 15時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
雨夜なつ(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅れてすみません。素敵と言っていただけて本当に嬉しいです！こちらこそありがとうございます！ (2018年8月26日 9時) (レス) id: 32cfc3978e (このIDを非表示/違反報告)
雨夜なつ(プロフ) - ミーナさん» コメントありがとうございます。返すのが遅れてすみません。感動して頂けて良かったです。こちらこそありがとうございました！ (2018年8月26日 9時) (レス) id: 32cfc3978e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨夜なつ | 作成日時：2018年7月6日 19時
