宿儺さま【呪術廻戦】 (ページ15)

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お食べ下さいページ15

「A、A……」

よくわからない場所で目が覚めた
あたり1面は赤く染まり空には大きく白い線がある
足を動かすとなにかが軽い音を立てて転がり落ちた
それらは骨であった

宿儺さまは悲痛な声で私の名を呼んでいた

積み上げられた骨の上で私を抱きかかたまま
震えた声で、震えた腕で私の背中を撫でた

「宿儺さま」

声をかけると宿儺さまは私の肩口から離れ顔を見つめた
腕のひとつがゆっくりと動き指先が頬を伝っていく

心地よい感触に目を細めながら

「私めをお食べ下さい」

そんな一言で、宿儺さまは獣のように私に齧り付いた

肩のあたりから始まり腕から指先へ
次は太ももを噛んでゆっくり咀嚼した
腹は優しく割かれ中身もちゃんと

自らの身体が食われていく様をはっきりと覚えている

痛くて苦しくて熱くて寒かったけれど
心地の良い幸福感がそれらすべてを上回った

宿儺さまは一頻り味わうと私の両頬をそっと掴み目を合わせた

骨も見えて中もぐちゃぐちゃだけど
宿儺さまが優しくて暖かい接吻をひとつ落とすと、みし、と耳元からなった音と共に私の視界は真っ暗になった

彼女の潰れた頭が再生していく
筋肉も脂肪も骨も内蔵も順々にゆっくりと元の機能を取り戻していく

喪失感が絶えなかった

女はいつの間にか心に住み着いていた

初めから変なやつだった
女、子供はただ泣き叫び逃げるしか能はないと思っていた
あれは血にまみれながらも俺に微笑む

俺が待てと言えば三日三晩なにも食わずそこに座りづけた
俺がころせと言えば人間の子供さえ手にかけた
俺が去ねと言えば自らの首を木の欠片で掻っ切ろうとした

それが面白かった
何も求めずただ忠実に

だから傍に置いていた

ころした呪術師の家に彼女をおいた
意味を成していなかったその家は彼女が待つ所となり
俺の帰る場所となった

月が存在を示す頃、俺は彼女に与えた部屋へ向かう
決まって彼女は部屋の中央に正座し笑顔で迎え入れる
どれだけ荒々しくしようと痛ぶろうと

その日は、妙な夜だったことを覚えている