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7枚目 ページ7

モーガン氏もといルイス・マクラウドの顔色が変わり、次の瞬間には諦めたように内海の前で頭を下げている。しかし突然、項垂れていたはずのマクラウド氏の身体がバネの様に跳ね上がった。内海の喉を切り裂こうと伸ばされたナイフ。マクラウド氏の左手に握られたそれを、内海が丸めた新聞紙で受け止めそのままテーブルの上に押えこんだ。勢いがついたため優雅なティータイムテーブルの雰囲気を壊してしまう音が響いたが他の乗客は誰も気には止めていないようだ。


 「どうやら、英国秘密諜報機関では護身用にナイフの使い方を指導しているという噂は本当だったのですね」甘利はそう言ってマクラウド氏の首の頸動脈を抑える。「頸動脈を切るのにナイフは必要ありません。爪で十分です。訓練を受けたのなら、もちろんお聞きになっているはずですよね。ナイフは抜いた瞬間に勝敗が決まる。プロが相手の場合、一度抜いたナイフは脅威になり得ない」


 丸めた新聞紙の中からナイフを確認して内海がマクラウド氏に返すが、受け取らない。内海がナイフを海に投げ捨てる。波間にきらめきを残してナイフは海に消えた。「......なぜ。なぜ、私だとわかった」青白い顔のままマクラウド氏は内海に喘ぐように尋ねた。「情報があったんですよ英国秘密諜報機関の暗号専門家である教授〈ザ・プロフ〉が姿を消した。行き先はおそらく日本だと。可能性を考えるとこの船に乗っている。そこで私がお待ちしていたのですよ」


 「どうしてだ、この整形は例え古い友人や家族でさえも見分けがつかないはずだ」内海は、「ああ」と続けた。「外見のことをおっしゃっているのですね」肩をすくめ話す。「確かに私が見せられたあなたの写真と今のあなたは全然違う。髪の毛の色や形口髭の変装くらいならともかく目や鼻、唇の形まで異なっている。くぼみのある突き出た顎。英国の医療整形技術には感心しますよ。なんなら、声質を変化させるために声帯まで手を加えたのですか。一センチの身長の違いは上げ底靴ですよね。唯一気になったのは瞳の色ですが特徴的なグリーンの瞳を隠す為ビニール質の茶色いレンズを入れている。確かにあなたが言った通り古い友人やご家族にも、あなただとは分からない」


 内海はマクラウド氏の顔の変化をつらつらと述べる。さも、この様な変化には気に求めないという具合にだ。その答えにマクラウド氏の疑問は深まるばかりだ。

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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時

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