49枚目 ページ48
揃った三人に福本が呼んでいたことを伝える。四人で食堂に行くのは不思議な感覚。道中、昼寝をしているエマを起しに自室へ向かう。眠たげなエマを連れて食堂に降りると暑い季節に限る風物詩が並ぶテーブルにつく。
「What is it?」きらめく瞳でそれを見ている。「Also called shaved ice or crashed ice.」(それはシェーブアイスよ、クラッシュアイスとも言うわ。)興味津々なエマに説明すると横から実井が口を挟む。「In japan called kaki-gōri. 」(日本ではかき氷と呼びますよ。)「Kaki.」先日、干し柿を食べて虜になったエマが反応する。
「Sorry Emma, certainly it is “Kaki” but it is different from your favorite. 」(ごめんよエマ、確かに“かき”とは言うが君のお気に入りとは違うんだ。)残念がるエマを宥めて福本が作ったかき氷を食べる。「暑いと良いですね、こう言うものも」この御時世、かき氷といっても削った氷に砂糖をかけるものや金時と呼ばれるものが主流だ。
はしゃぐエマの舌を見て冷たさで赤くなっている事を教える。一生懸命に見ようと舌を伸ばしている姿に思わず笑みが溢れる。「見て」と私の舌を出して見せる。「Wow. How bright red.」見せていると、横から大人たちが「本当ですね」「真っ赤だ」などじろじろと観察されている様な気持ちになる。そろそろ恥ずかしくなってきた気がする思わず舌を引っ込める。
「はやく食べないと溶けてしまいますよ」意識をそちらへ逸らすように言う。専ら、彼らの意識が逸れることなどないのだが「南の琉球では、氷にぜんざいをかけて食べるものを一般的にぜんざいというらしいですね」知識披露に「暖かい小豆は氷に合うのか」疑問が出てくる。「南国と言われていますからね」誰かの解釈を待てば頭を働かせるまでもなく答えが出てくる。「ぜひ、食べてみたいものだな」好奇心のある者の声で明日のオヤツが決まった。「ならば、明日にでも試してみよう。小豆が多く手に入らないかもしれないが」福本の言葉で明日はぜんざいかと心持ち嬉しくなる。
さっそく琉球のぜんざいを食べ終わった後に、以前結城中佐に頼まれていた準備を終えたことを伝えた。使われない角部屋の一角を利用した尋問部屋など趣味が悪い他ない。エマをそこから遠ざけるのに苦労したものだ。薄暗く冷たい部屋に椅子と注射器があるだけなんて一般家庭ではあり得ないのだから。エマには普通の家庭を忘れて欲しくない。
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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時