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48枚目 ページ47

「この子は、このご時世の日本で上手く生きていけるでしょうか。これからも偏見や好奇の目に晒されながら生きていくのでしょうか」たった今日一日でも痛感した。エマは日本で生きていくには不便なのかもしれない。


 「そうねぇ、この子が私くらいお婆さんになる頃は日本は今から八〇年以上時が経ってるわその時ならきっと、きっといいですよ」お婆さんと別れて私はエマを連れ、大東亜文化協曾へ戻る昼過ぎた頃。昼寝をするためエマと二階に上がったベッドに横たわる。


 小さな身体に薄手のシーツをかけるそっと部屋を出て、朝訪れた食堂へ足を運び福本にお願いして珈琲をもらう。飲み物を飲みながら落ち着いていた時間が、遥か遠くの昔に思えた。結城中佐に振られた仕事とはいえ、旅客船では収穫の得られない活動であったのは確かだ。


 田崎、神永、甘利ときた次は誰だろうか?長期の任務は止めていただきたい。ふと、大量に氷を削る福本を見る。「福本、何か手伝いましょうか」彼は決して氷を大量に削る力仕事を手伝えとは言わない。「ああ、それなら皆を呼んではくれないか」その言葉を快く了承し甘利、神永、実井、田崎、の四人を探す。


 まずは寝室に向かう。ノックをしても返事は返ってこないので彼らに限って寝ているなんてこともないとは思うが一応、断りを入れドアを開ける。やはりシワひとつないベッドメイキングが施されている。図書室になら本を傷めないよう湿気も少なく涼しいので、誰かしらが居るかもしれないと思い階段を降りる。


 ドアを開け、大きめの机には本が数冊積まれている。その中の一冊、『The Devil’s Dictionary』。愛国心と引けばCombustible rubbish ready to the torch of any one ambitious to illuminate his name.(自分の名声を明るく輝かしいものにしたいと野心を持つ者が、たいまつを近づけると、すぐに燃え出す可燃性のもの。)なんとも皮肉満載の辞書である。読み手に似ているだなんて口が裂けても言えない。


 「実井、福本に遣われて呼びにきました」そう告げると「そうでしたか、今向かいますね」と図書室の扉を開け私を先に通してくれる。実井に他の機関員の居場所を聞く。「そうですね、講義室などはどうでしょう」まだ足を運んでいないと思い、実井と別れ講義室に向かう。確かに実井の言った通り三人が揃っていた。やはり餅は餅屋か。機関員の居場所は同類に聞くのが一番。

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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時

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