47枚目 ページ46
朝から廊下には子供のはしゃぎ声が響く。「Please stop Emma.wait.」肌着をつけた格好で走っているエマはAが追いかけてくれるのが嬉しいのか、小さな足音をパタパタと響かせている。追いかけっこも楽しいがこちらとしては服を着て欲しい。
楽しそうな声と共にエマの足音は途絶えた。すると廊下の向こう側から田崎がエマを抱えながら歩いてきた。「There there. Don’t border A. 」(よしよし、Aの言うことをお聞きなさい。)理解したのか分からないがニコニコとした笑顔で抱っこされていた。田崎からエマを受け取り昨日買った服をエマに着せる。
さらに可愛らしくなったエマを見て、腕白ぶりを許してしまう。散歩に行く予定だったので、朝飯を食べて公園に行くことにした。一階の食堂に降りると和食の香りが立ち込め、室内には田崎を除く顔ぶれが揃っていた。福本が用意してくれた白米に味噌汁、漬物といった簡素な食事は果たしてエマには合うのだろうか。
ちらりと座るエマを見ると淑女に相応しいテーブルマナーかと言われれば頷けないが、きちんとフォークで食べている。前掛けを存分に汚しながらも完食し、なおの事楽しそうにしている。散歩に行こうと言ってエマを連れ出す手を繋ぎながら少し歩き、疲れたらベンチで休んだ。行き交う人に見られる。それぞれ、好奇の眼差しであったり物珍しそうに見ている。この子はこれから異国の地でどう生かされていくのだろうと考えた。
母親も居ない、父親は記憶にあるのだろうか?この世に生まれて二年の齢でそれは過酷に思えて仕方がなかった。ふと、足元に影がさして原因を探すように目線を上げる。「ご一緒してもいいですか」「ええ、勿論ですわ」お婆さんが座りやすいよう、少しだけ横をつめる。「あら、娘さんかしら。可愛らしい」このお婆さんは優しく語りかけてくれた。「はい、二歳になります」エマは外国の血を引いているがまだ小さな子供だ。「まあ小さい、綺麗な赤毛ねぇ瞳の色も綺麗な青色。きっと貴女に似て美人になるわご主人は外国の方」私の実子ではないのだが、ここでその話をしてしまうとややこしく感じた。「はい、イギリスに」お婆さんに話を合わせる。「あら、そうなのね私たちは子供が居なかったの。十年以上も前に親戚の男の子を預かったのだけど、今は軍にお勤めされてるから滅多に会えないの。もう、長いことね」お婆さんの話では預かった子供は軍人さんだと言う。
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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時