42枚目 ページ41
甘利に一言返せたことに優越感を覚えて風呂へと足を向けた。「へぇ、君も言うね」甘利に後ろから腰を捕えられ後ろ髪をかき上げられた露わになったうなじに口づけられる。「だけど、詰めが甘いって言われない」熱くなった顔を隠すようにお風呂に入る。先ほどの甘利に気力も体力も全て奪われたのでシャワー浴びてあがることにした。髪を洗い泡立った石鹸を身体に馴染ませると、首に回った手がそこで止まる。甘利に出し抜かれた感が否めない。
ようやく、日本の地へ足を着けることが出来た。甘利に抱えられたエマはとても楽しそうだ。くるくると私たちの周りをフラテが回る落ち着かせるように撫でて大東亞文化協會へ向かう。「オサムー、どこへ向かってるの」エマの可愛らしい声に甘利は答える。「エマの新しいお家さ」「すごーい、ヨシノも一緒」
「ええ、一緒よ」エマにヨシノと呼ばれて甘利を見る、このまま偽装〈カバー〉で呼ばせ続けるのだろうか。甘利が口を開く。「エマ、ここでは僕のこと甘利って呼んでほしいな。それにヨシノもAってね」どうして。と丸い目で見つめてくるエマにここでのニックネームだよ、と説明をしている。「わかった」と元気に返事をしてくれるエマに自然と笑みが溢れる。しばらくぶりに足を踏み入れる。
神永、田崎、福本、実井が揃っていた。幼女を連れる甘利を見て一瞥し「どこの女に産ませたんだ」「ちゃんと引き取るとは律儀なものだな」と言う始末で甘利が否定すると「じゃあ、Aはいつ産んだんだ」と私に火の粉舞う。「どちらも違うわ」と言うと「この子は見てもせいぜい二、三歳だろうAが産んだ事が本当ならば少なくともD機関設立時の二年前の秋には身篭って翌年の夏に出産をしていたことになる。当時、ここにAは俺たちと一緒に生活していた。もしも俺の推測に誤解があって、この子の年歳が二、三歳でないか俺たちがここに入る前Aが産んだ子供なら話は別だがな」
「勝手に言わないでくれるかしら」甘利がエマを床に降ろすと「さあ、みんなに自己紹介して」と促され先程覚えたばかりの日本語で話し出した。「エマ・グレーン、です」「へー、エマちゃんか。May I ask your age? little princess.」と聞く神永の言葉に元気よく「I'm Two.」と答えているこの際「十八年後も僕と仲良くしてね」なんて言ってる神永は無視だ。
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作者名：カナリアナ | 作成日時：2019年3月28日 23時
