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38枚目 ページ37

あの男をこの手で殺すことができるなら何でもする、と言いました。相手は驚いたようでしたが私の目を見て本気だということに気づきある人物に引き合わせてくれました。こうして私はドイツのスパイになりました。私はドイツのスパイとして、マクラウドを観察し彼を殺す機会を窺いました。毒薬の扱い方や指紋を消す方法は彼らに教わったものです。


 しかしマクラウドが突然英国から姿を消した時は慌てました。ですが、ドイツの諜報機関がすぐにマクラウドが顔を変えて日本に向かうつもりらしいと教えてくれました。逃すわけにはいきません。いくら顔を変えようとも私にはきっとわかるという自信がありました。私は船に乗り、変装したマクラウドを見つけました。天は私に味方しました。マクラウドが飲みかけのままグラスを残して席を立ったのです。私は教わったとおり指紋をマニキュアで消して毒薬をグラスに注ぎ込みました。マクラウドが死ぬところは見ていませんできることならうんと苦しんで死んでほしかったと思います。


 馬鹿な奴だ。話を聞いて内海は顔をしかめた。もちろんシンシアのことではないマクラウドの方だ。そう言えばマクラウドはクロスワードパズルを解きながらこんなことを言っていた。「もし仮に、仮にですよ。予め内容が判明している文章があるとしましょう。その文章と同じ内容のエニグマ暗号文が手に入れば二つを突き合わせることで解読の手掛かりが得られます」予め内容が判明している文章、例えば......そうだな英国海軍の極秘の作戦指示書だ。長年培ってきた暗号解読手法はエニグマの登場によって無に帰した。そのことを知ったマクラウドは焦り、様々な強引な手法に打って出た。


 結城中佐に呼ばれ任務を引き受けたその足で内海はマクラウドの独断と思しき作戦の洗い出しを行った。ディリー・テレグラフ紙にクロスワードパズルを掲載したことなどほんの子供だましのようなものだ。マクラウドが行った最大にして最も無謀な企ては庭仕事〈ガーデニング〉という一見長閑な暗号名で呼ばれる作戦だった。彼は英国海軍の極秘作戦指示書を含む機密書類入り鞄を民間の貨物船で運ばせる一方、この情報を逆スパイを使って密かにドイツに流した。海上の完全制圧をもくろむドイツにとっては喉から手が出るほど欲しい情報だ。案の定、ドイツ海軍は密かに仮装巡洋艦を貨物船の航路に派遣。

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作者名:カナリアナ | 作成日時:2019年3月28日 23時

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